計測器、技術の要はハードからソフトに:Keysight Technologiesプレジデント兼CEO Ron Nersesian氏(1/2 ページ)
キーサイト・テクノロジーは、プライベートセミナーおよび展示会「Keysight World 2016 東京」を2016年7月14〜15日に開催した。それに合わせて来日した、米国本社Keysight Technologies プレジデント兼CEOのRon Nersesian氏に、Keysightの戦略などを聞いた。
スピンオフには慣れている
Agilent Technologiesが電子計測事業を会社分割し、Keysight Technologies(以下、Keysight)として本格的に業務を開始した2014年8月から、約2年がたとうとしている。Keysightのプレジデント兼CEO(最高経営責任者)であるRon Nersesian氏は、会社分割後のビジネスの概況について「極めてうまくいっている」と語る。「Agilent Technologies自体、HP(Hewlett-Packard)の計測器部門を分社化したものだった。そのため、われわれはスピンオフに慣れている。Keysightの会社分割では当初、Agilent Technologiesから完全に独立して安定すまでに1年はかかるとみていた。だが、予定よりも6カ月早く、その過程を完了することができた」(同氏)
それを裏付ける1つの例が、無線通信の研究開発向けソフトウェアを手掛ける英Aniteの買収だ。買収は2015年8月に完了している。Nersesian氏は「買収には12〜18カ月かかるとみていたが、9カ月で完了した」と述べる。
さらに、2016年度には組織変更も行っている。以前は、製品ごとに組織が分かれていたが、変更後はマーケットごとに組織を分けたという。具体的には、ワイヤレス分野を扱う「通信」、自動車やエネルギー、半導体向け製品を扱う「産業」、修理やキャリブレーションなどサポート全体を提供する「サービス」だ。顧客からみると、コンタクトを取る窓口が1つで済むようになったというのが最大のメリットだ。従来であれば、オシロスコープはこちら、スペクトルアナライザであればこちら……といったように複数に問い合わせをする必要があったが、1つの窓口に連絡をすれば、必要な製品が全てそろうようになる。Nersesian氏は「例えば、5G(第5世代移動通信)開発の評価ソリューションを、1つの窓口に相談してもらえれば、必要な計測器をそろえて提示できるようになる」と説明する。このようにコンタクト先を分かりやすくすることで、「中小企業にもKeysightの名前を浸透させていきたい」(Nersesian氏)という。
Keysightの2015年度における売上高は29億米ドル。2014年度における売上高も29億米ドルと、大幅に成長しているわけではない。だがNersesian氏は、「移動通信は4Gから5Gに移行するための研究開発が進み、自動車では、搭載される電子部品の数は増加の一途をたどっている。このように、さまざまな分野における技術の進化や変化によって、計測器に求められる性能や機能が変わっていく。これは、Keysightのビジネスにとってよいことだ」と語る。
同氏は「開発費などを含む全てのリソースを、電子計測事業だけに注げるという点は、Agilentから会社分割した大きなメリットだ。Keysightは2015年、4億米ドルを研究開発費に投入し、6億米ドルをAniteの買収に当てた。製品ポートフォリオの拡張に10億米ドルもの資金を投入できたことになる」と続けた。
2015年度の売上高を地域別でみると、アジア太平洋地域が44%、米州が38%、欧州が18%となっている。アジアでの売上高が最も高い理由について、Nersesian氏は、市場規模が大きい中国を抱えているからという理由に加え、「製造拠点だけでなく、R&D(研究開発)の拠点もアジアに移ってきているからだ」と説明した。「数年前までは、アジアには製造拠点だけを保有するメーカーがほとんどだったが、最近はR&D機能をアジアにも移しているケースがみられる」(同氏)
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