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幽霊や極低温原子、FPGAを手軽に使って処理ミリ波レーダーと量子コンピュータ(1/4 ページ)

大量のデータから目的の情報を得る、極めて複雑な設定条件から正しい組み合わせを見つける。ミリ波レーダーや量子コンピュータの開発課題だ。National Instruments(NI)の年次カンファレンス「NIWeek 2016」(テキサス州オースチン)では、このような開発事例を3日目の基調講演において複数紹介した。

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「NIWeek 2016」現地レポート


図1 ENRIの二ッ森俊一氏

 「滑走路上の落下物は、事故につながる。刻々と離着陸が続く滑走路で落下物を検知しようとすると、カメラでは解像度が不足する。ミリ波レーダー*1)であれば、直径200mの範囲から5cmの落下物を検知できる」(海上・港湾・航空技術研究所 監視通信領域で主任研究員を務める二ッ森俊一氏、図1)。

*1) 総務省の「電波資源拡大のための研究開発」の一貫。日本では利用されていない90GHz帯の用途を開拓する目的で始まった研究開発であり、同研究所(ENRI)や日立製作所、鉄道総合技術研究所など複数のメンバーが研究テーマ別に開発を進めた。

 ミリ波レーダーの開発には3つのチャレンジがあったという(図2)。まずは開発期間だ。「90GHz帯は未利用であるため、RFなどの周辺デバイスを一から開発する必要があった。トランシーバー、レシーバーとも回路を設計しなければならず、4年間の開発のうち、ここに最も時間を要した」(同氏)。

 ハードウェアが完成した後に残っていた時間はわずかだった。実試験の機会が年4回に限られているため、これを逃すことはできない。実試験の許可を得たうえで試験を進めなければならないため、1カ月以内で落下物を十分な精度で検出できるよう「ソフトウェア」を開発する必要があった。今後は5年間をかけて成田空港で開発したシステムの実証実験を進める予定だ。


図2 ミリ波レーダー開発における3つのチャレンジ

データ処理にはFPGA、FPGAには……

 2つ目のチャレンジは膨大なデータを扱うこと。「1台のレーダーが得るデータは毎秒1.2Gバイトにも及ぶ。ここからエコー(ゴースト)を除き、落下物の情報だけを取り出すために、高いデータ処理能力が必要になる(図3、図4)。そのためFPGAを採用した」(同氏)。開発目標は、誤警報(偽陽性)確率を例えば0.01%に抑えることだという。

 3000mの滑走路を想定したとき、500mまで検知が可能なミリ波レーダーを滑走路の両脇に並べる必要がある。扇形の検知可能範囲が重なるように置くと、レーダーの台数は6〜8に及ぶ*2)

*2) 6〜8台のアンテナから、データ処理を行う中央に信号を送る装置も新規に開発した。RoF(Radio over Fibre)技術を用いた。電気信号を光信号に変えて中央に送り、中央で電気信号に戻して処理する。


図3 データ処理前のレーダー像 基調講演の会場の様子。多数のエコーが映り込んでいる

図4 データ処理後のレーダー像 会場の壁を検出できた

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