車載ネットワークのセキュリティ、まだ脆弱:ジープのハッキングから1年(2/2 ページ)
2015年、ジープ・チェロキーがハッキングされた事件は大きな話題を呼んだ。以降、車載ネットワークやコネクテッド・カーにおけるセキュリティ対策は盛んに議論されているが、いまだに弱点だということに変わりはないようだ。
「SecureCAN」
EE Timesが2016年8月3日に東京で、Trillium(トリリウム)のCEOであるDavid Uze氏に本件について尋ねたところ、同氏は「2016年に確認されたジープへの2度目の攻撃は、世の中の自動車の多くは、いまだに無防備な状態であることを示している」と答えた。
Uze氏は「ECUネットワーク向けのセキュリティソリューションが欠けていることが、安全性に関する本当の問題だ。CANは、ブレーキやステアリングなどクルマの駆動に直接関わっているからだ」と続ける。同氏によれば、こうした動作の85%はCAN上で行われているという。
Uze氏は、「CANは、セキュリティ全体で見た場合に最も脆弱(ぜいじゃく)なポイントとなっている」と強調した。
東京に本拠地を構えるTrilliumは、創業して2年のスタートアップだ。同社は「SecureCAN」という技術を開発した。CANバスの暗号化と鍵管理システムで、8バイト以下のペイロードの保護に向けた技術である。
自動車メーカーやティア1サプライヤーの間では、CANバスを保護するのはほぼ不可能だと考えられてきたが、Trilliumは、SecureCANによって、認証と暗号化、鍵管理の技術をCANバスに実装することができると主張している。
HarmanやAugus Cyber Security、Symantec、Intelなどのメーカーは、車載向けセキュリティ技術の開発をわれ先にと進めている。だがゴールはまだ見えていない。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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