「SEMICON West 2016」、半導体露光技術の進化を振り返る(後編):福田昭のデバイス通信(83)(1/2 ページ)
今回はステッパー(縮小投影分割露光装置)の進化の歴史をたどる。1980〜1990年代半ばにかけて、g線ステッパーでは光学系の開口数(N.A.)が順調に向上し、i線ステッパーへと移行していく。その後、1996〜1997年になると、量産に使えるKrFレーザーステッパーが登場する。
ステッパー(縮小投影分割露光装置)の進撃
半導体製造装置と半導体製造用材料に関する北米最大の展示会「SEMICON West 2016」が7月12〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催された。12日には「FORUM」(フォーラム)と称する併設の講演会があり、専門テーマに関する解説や展望などを数多くの研究者や技術者、経営者などが発表した。
前回は、ニコンの米国子会社であるNikon Research Corporation of AmericaでDirector of Computational LithographyをつとめるStephen Renwick氏の講演を補完する目的で、露光技術の進化を1970年代後半から1980年代前半まで振り返った。
前回の後半で説明したように、光露光技術は等倍一括露光方式(プロジェクション)から縮小分割露光方式(ステッパー)への転換を実現することで、プロジェクションの解像限界を乗り越えることができた。光源の波長を短くすることなく、ステッパーは技術改良によって解像度を高めていった。
技術改良の要点は主に、屈折レンズの硝材を改良することによって光学系の開口数(N.A.)を上げることである。解像度はN.A.に反比例して向上する。また波長にも比例して向上する。
ステッパーの光源には当初、水銀灯の輝線の中で「g線」と呼ぶ波長が436nmの紫外線を利用していた。ニコンが1980年に世界で初めて開発したステッパー「NSR-1010G」は、N.A.が0.35、解像度が1.00μm、縮小投影比率が10分の1という仕様だった。このステッパーは残念ながら、スループット(単位時間当たりのウエハー処理枚数)がかなり低いという問題点を抱えていた。そこで縮小投影比率を5分の1に緩めてスループットを向上させた「NSR-1505G」を開発し、1982年に販売を始めた。「NSR-1505G」は、N.A.が0.30とやや低く、解像度は1.20μmと下がったものの、販売は極めて好調だった。
前回でも説明したように、1984年には半導体露光装置大手のキヤノンもステッパー「FPA-1500FA」を発売した。同じ年にはニコンが「NSR-1505G」の改良品種である「NSR-1505G3A」を開発し、市場に投入した。両装置は光学系のN.A.が0.35、ケイワンファクタ(k1)が0.80、解像度は1.00μmと類似の仕様を備えていた。
ステッパー(光源がg線であることから厳密には「g線ステッパー」)は、N.A.を順調に向上させていく。1987年にはN.A.が0.45、1988年にはN.A.が0.54のステッパーが発売された。1988年の時点で解像度は0.65μmまで微細化された。
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