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我々が求めるAIとは、碁を打ち、猫の写真を探すものではないOver the AI ――AIの向こう側に(2)(6/9 ページ)

ちまたには「人工知能」という言葉が氾濫しています。ですが、明言しましょう。「人工知能」という技術は存在しません。そして、私たちがイメージする通りの「人工知能」の実現も、恐らくはまだまだ先になるでしょう。

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「“人工知能”でビジネス刷新」会社を倒産させる?

 ではここで、本コラム前半に関する私の所感を述べたいと思います。

(1)「“人工知能”でビジネス刷新」という考えをしていたら、会社を倒産させることになりかねません

 前述の通り、“人工知能”という技術はありません。(一見)知的処理をしている(ように見える)各種のソフトウェア技術があるだけです。「命令すればそれに従う部下」のような感覚で“人工知能”を理解していたらエラいことになります。

 知的処理技術の内容をキチンと理解して、それがビジネスに適用できるか否かを、自分の頭できっちり考えないと、どこぞのSI(System Integrator)ベンダーに丸めこまれて、大損害を出すのがオチです。

 ビッグデータブームのピーク(2013年ごろ)に、ゴミのようなデータでも山のように集めれば、そこからすごい知見が得られると信じていた、アホな会社役員のようにだけはならないよう、ご留意ください。

 人工知能であれ、ビッグデータであれ、つまるところ「ゴミからは、ゴミしか得られない」のです。

(2)安心してください。当面、「“人工知能”との共存」を心配する必要はありません

 共存以前に、そんな知能は、少なくとも今回の第3次ブームでは登場しません(私は、第15次ブームくらいになっても、まだ難しいのではないかと思っています)。

 これは、論理的かつ合理的に説明できます。現時点で、人間との「共存」や「闘争」以前に、“人工知能”同士ですら「会話」ができない状況だからです。

 コンピュータ同士の通信を実現させるためだけに、私たちがどれだけ長い間苦労し「通信プロトコル」の設計を続けてきたと思いますか?

 日常研究員(×週末研究員)の私は、今、“人工知能”以前に、コンピュータ同士で「交渉」を行わせるプログラムの実装で、毎日、一人実験室に閉じ込もって、頭をかきむしっている有りさまです。

 私の目の前にあるPCたちに対して、「お前たち。頼むから、自分たちで共通の言葉を作って、勝手にしゃべりだしてくれよ」と、泣いてすがりたいくらいです。

 “人工知能”同士はもちろん、コンピュータどうしですら会話できないのに、ましてや「人間との共存」なんて ―― どれだけ、(現状の)“人工知能”を過大評価しているんだ ―― と、思わずため息が出てしまいます。

 ですから、私たちが知らない間に、“人工知能”が自力で通信プロトコルを作り出して、勝手に会話を始めたら、その時、初めて、「“人工知能”との共存」について本気で心配し始めればいいのです ―― 正直なところ、私は、第15次ブーム(300年後くらい?)までは、全く心配いらないと思っていますけどね。

 それでも、1人のエンジニアとして、私は、私が死ぬまでにはぜひ、「独自の言語を作って、勝手に会話を始めた“人工知能”たち」を見たいと願っています。

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