「水」ベースのリチウムイオン伝導性液体を発見:IoT社会の電源システムにも大きなインパクト(1/2 ページ)
東京大学らの研究グループは、水をベースとしたリチウムイオン伝導性液体「常温溶融水和物(ハイドレートメルト)」を発見した。安全かつ安価な新型蓄電池の開発が可能となる。
安全で安価な3V動作のLi電池の開発を可能にする
東京大学大学院工学系研究科の山田裕貴助教と山田淳夫教授らの研究グループは2016年8月、水をベースとしたリチウムイオン伝導性液体「常温溶融水和物(ハイドレートメルト)」を発見したと発表した。この液体は、3V以上で動作するリチウムイオン電池の電解液として機能することから、安全かつ安価な新型蓄電池の開発が可能になるとみられている。
今回の成果は、山田氏らと科学技術振興機構の袖山慶太郎さきがけ研究員、物質・材料研究機構の館山佳尚グループリーダーらとの共同研究によるものである。研究グループは、水と特定のリチウム塩2種を一定の比率で混合した。一般的にリチウム塩二水和物は固体となるが、今回の研究でリチウム塩二水和物が常温で安定な液体(ハイドレートメルト)として存在することを発見した。
水は、1.2Vの電圧で水素と酸素に分解されるのが通常である。ところが、発見したハイドレートメルトは3V以上の高い電圧を印加しても分解しないことが分かった。これまで、3Vを超えるリチウムイオン電池の可逆作動は、特殊な有機溶媒を用いた電解液でしか対応することができなかったが、今回は水を用いた電解液で初めて成功したという。
理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」を用いて、第一原理分子動力学計算による解析を行った。そうしたところ、全ての水分子がリチウムイオンに配位した状態で液体となるなど、一般的な水溶液では取り得ない溶液構造となっていることが分かった。そして、ハイドレートメルト中の特殊な水分子の状態が、極めて高い電圧耐性を示す起源となっていることが判明した。さらに、優れたリチウムイオン輸送特性を備えているため、リチウムイオン電池用の水系電解液として応用可能であることも明らかとなった。
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