「SEMICON West 2016」、7nm世代以降のリソグラフィ技術(東京エレクトロン編):福田昭のデバイス通信(87)(2/2 ページ)
今回は、7nm世代以降の半導体製造プロセスで使わざるを得なくなるだろう「自己整合(セルフアライン)的なリソグラフィ技術」に触れる。その候補は3つ。東京エレクトロンのBen Rathsack氏が、3つの候補技術の現状を紹介した。
EUVリソグラフィのSADPとArF液浸のSAQPを比較
EUV(極紫外)リソグラフィでは、ハーフピッチ15nmのパターン形成能力をArF液浸リソグラフィと比較してみせた。EUVリソグラフィではSADP(ダブルパターニング)、ArF液浸リソグラフィではSAQP(クオドパターニング)を使用する。
EUVリソグラフィのSADPでは最初にハーフピッチ30nmのライン・アンド・スペースを形成し、それからラインの側壁に絶縁膜を形成してエッチングによって2分の1にパターンを微細化する。
パターンの位置ずれ(3σ)はArF液浸が0.9nmであるのに対してEUVは2.4nm、パターンエッジの粗さ(3σ)はArF液浸が1.3nmであるに対し、EUVは2.2nmという結果を示していた。
DSAはライン幅とラインエッジのばらつきがまだ大きい
誘導自己組織化(DSA)技術とは、高分子(ポリマー)が自発的に規則的な構造を形成するように工夫することで、ライン・アンド・スペースやコンタクトなどのパターンを形成する技術を指す。ポリマーが自発的に構造を形成するので、露光プロセスが存在しない。また解像限界はポリマーの大きさによって決まるので、原理的には7nmや5nmなどの極めて微細なパターンを形成可能である。
ただし「規則的な構造を自発的に形成する」とはいっても、そのままでは半導体製造工程に使えるパターンにはならない。そこで「ガイドパターン」と呼ぶパターンをあらかじめシリコンウエハーにつくり込んだり(ガイドパターン形成用の露光プロセスが存在することになる)、ウエハー表面の表面エネルギーを制御したりすることで、所望の規則的なパターンを形成するようにポリマーを誘導する。このため、誘導自己組織化(DSA:Directed Self-Assenbly)と呼ばれる。
DSAの大きな課題は、欠陥の存在によるパターンの破壊である。Rathsack氏は講演で、0.1μm前後の大きさの円錐(コーン)状欠陥が存在すると、パターンがどのように壊れるかをスライドで見せていた。ライン・アンド・スペースを形成するパターンが欠陥付近では、欠陥に向かってパターンが大きく折れ曲がっている。
このほか、30nmピッチのライン・アンド・スペースをDSAで形成した結果を見せた。ラインとスペースの寸法均一性は良好だったものの、ライン幅の粗さとライン・エッジの粗さがまだ大きく、課題を残した。
(次回に続く)
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