被災地で早期救助を可能にする画像認識システム:どこに、どのような物体があるかを自動で識別(2/2 ページ)
信州大学と東北大学の研究グループは、遠隔操作ロボットで撮影した被災地などの映像から、捜索/救援活動に有用な情報を得ることができる画像認識システムを開発した。
乱雑なテクスチャ状況下での環境認識
2つ目の研究成果は「乱雑なテクスチャ状況下での環境認識」技術の開発である。木や草が乱雑に生えていたり、枯れ葉が堆積していたりする森林環境を認識するために、乱雑なテクスチャ(模様)から有用なパターンを見つけ、種別を行う方法が有用である。研究グループは、2段階の認識処理を開発した。まず、入力画像を等間隔に区切る。グリッドと呼ぶ区切りごとに犬や地面、木、木の幹など種別を行い、画像をおおまかに分割する。次に、各グリッド内部の各画素に対して、それぞれ種別を行うという。
識別処理するための基本システムは、2種類の識別器で構成している。1種類はグリッド単位で切り出した画像領域から特徴ベクトルを求め、それを入力として識別を行う。もう1種類は、ピクセル単位で求めた特徴ベクトルを入力とするもので、グリッド単位識別でのカテゴリー数だけ用意される。
3つ目の研究成果は、「瓦礫構成物の表面状態の記述と種別」技術の開発である。被災した建物内部の映像解析を行う場合、材質などの種別に加え、汚れた場所/ぬれた場所の検出、汚れ/ぬれの程度を適切に推定することで、現場作業者の安全性はさらに向上することになる。ところが、建材や内装に利用する材質は、特徴的な模様が少なく、撮影画像からこれらの情報を得ることはこれまで難しかったという。
そこで研究グループは、細かなテクスチャの違いを記述するための識別手法(テクスチャ解析手法)に着目し、フィルターバンク2種と色情報の組み合わせにより、瓦礫を構成する材質を識別する技術を開発した。識別できた材質は、コンクリートブロックやMDF材、木板など10種類程度である。なお、現時点では半透明の物体(ビニール袋)や光沢の強い物体(アルミ板)などの識別はできなかったという。
また、材質表面の水や泥による汚れ度合いを数値化する技術も開発した。汚れによる材質表面の見た目が変化した場合でも、各材質が持ち合わせたテクスチャが激しく欠損していないかぎり、材質を推定することが可能だという。
研究グループでは、今回の研究成果は、災害対応だけでなくインフラ点検、農業、林業、水産業などへも展開できるとみている。
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