「SEMICON West 2016」、7nm世代以降のリソグラフィ技術(ASML編):福田昭のデバイス通信(88)(1/2 ページ)
「SEMICON West 2016」で行われた次世代のリソグラフィ技術を展望するフォーラムから、各露光装置メーカーの講演内容を紹介してきた。今回は、半導体露光装置最大手であるASMLのEUV(極端紫外線)リソグラフィ開発状況を中心に紹介する。
EUV露光装置を開発している唯一の企業
半導体製造装置と半導体製造用材料に関する北米最大の展示会「SEMICON West 2016」が2016年7月12〜14日に米国カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催された。同12日には「FORUM」(フォーラム)と称する併設の講演会があり、専門テーマに関する解説や展望などを数多くの研究者や技術者、経営者などが発表した。
中でも興味深かったのは、「Lithography: Charting a Path, or Paths, Between Nodes 10 and 5」と題する専門フォーラムである。次世代のリソグラフィ技術を展望するフォーラムだ。前回はこのフォーラムから、東京エレクトロンのProduct Technology and Marketing担当ディレクターを務めるBen Rathsack氏の講演概要をご紹介した。
今回は同じフォーラムから、半導体露光装置最大手ASMLのStrategic Marketing担当ディレクターをつとめるMichael Lercel氏の講演概要をご報告する。講演タイトルは「Manufacturing Next-Generation Process Nodes:It’s Under(and about)Control」である。
Lercel氏が述べた次世代リソグラフィに向けての取り組みは2つ。1つはArF液浸のマルチパターニング。もう1つはEUV(極端紫外線)リソグラフィである。これは半導体製造業界では当然というか、ごく普通のコメントだ。なぜなら、EUVリソグラフィ技術を本格的に開発している露光装置メーカーは、ASMLだけだからだ。唯一のEUV露光装置開発企業なのである。そしてASMLはArF液浸スキャナーのトップメーカーでもある。
それでは日本の露光装置メーカーはどうしているのか。ニコンは一時、EUV露光装置の開発を手掛けていたが、現在は撤退している。キヤノンに至っては、開発を手掛けてすらいないように見える。これは日本のメーカーの技術力の高低といったことではなく、EUVリソグラフィの開発には膨大なリソースの確保と、複数の関連企業(装置ユーザー、マスク開発企業、光学企業、レジスト開発企業、EDAツールベンダーなど)との連携が不可欠だからだ。
Lercel氏の講演は前半がASMLのArF液浸スキャナー、後半がEUV露光装置とEUVリソグラフィ技術に関するものであった。本稿では後半のEUV関連にしぼって内容をお届けしたい。
EUV露光のパターンはArF液浸マルチよりもはるかに良好
Lercel氏の講演で分かるのはまず、EUVリソグラフィの解像力の高さである。微細な配線が曲がりくねったパターンをモデルにArF液浸のマルチパターニングとEUVのシングルパターニングを比較すると、EUVで描くパターンは非常にきれいなのである。
講演では48nmピッチ(クリチカル寸法24nm)の曲がりくねった配線パターンをArF液浸のトリプルパターニング(LELELE技術)とEUV露光のシングルパターニングでそれぞれ露光したレジストのパターンを見せていた。ArF液浸のトリプルパターニングでは、直角のコーナーがことごとく丸みを帯びてしまうなど、かなり崩れた実用に耐えないパターンになってしまった。これに対してEUV露光はシングルパターニングでもかなりきれいなパターンを描けている。直角コーナーが少し丸みを帯びているものの、パターンの忠実度は非常に高い。
同じスライドではさらに、EUV露光のシングルパターニングによって32nmピッチ(クリチカル寸法16nm)の回路パターンを解像可能であることを示していた。
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