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「SEMICON West 2016」、7nm世代以降のリソグラフィ技術(ASML編):福田昭のデバイス通信(88)(2/2 ページ)
「SEMICON West 2016」で行われた次世代のリソグラフィ技術を展望するフォーラムから、各露光装置メーカーの講演内容を紹介してきた。今回は、半導体露光装置最大手であるASMLのEUV(極端紫外線)リソグラフィ開発状況を中心に紹介する。
急速に下がってきたマスクの欠陥密度
EUVリソグラフィが抱える大きな課題に、マスク(レチクル)の欠陥がある。これについてLercel氏はかなり積極的な見解を示していた。過去6年ほど、「1年で10分の1」という速いペースで欠陥密度は低下してきた。2010年の欠陥密度に対して2015年の欠陥密度はおよそ1万分の1に下がっている。このペースが今後も続くのであれば、未来は明るい。
最大の課題「光源の出力」がついに向上してきた
そしてもう1つの重要な課題で、最大の課題とされてきた光源の出力が、ついに上昇してきた。最近まで光源の出力は思うように上がらず、このためにスループットが実用的な要求仕様よりもはるかに低いままにとどまっていた。
それが現在では3年前の2倍以上、125Wを実現できている。125Wの光源による露光装置のスループットは300mmウエハーで1時間当たり85枚を達成しており、目標である125枚/時間にぐっと近づいた。開発段階の光源出力は200Wに達しており、ASLMは次期のEUV露光装置に、この高出力光源を搭載する予定である。最大出力では210Wに到達するもようだ。
2018年〜2019年には7nm世代のロジック半導体の量産が始まるとASMLは想定している。7nmロジックは、ArF液浸とEUVの組み合わせ(いわゆる「ミックス・アンド・マッチ」)で乗り切る構えだ。
(次回に続く)
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