“後発・ローム”がパワーデバイスで成長できる理由:SiCはシリコンデバイス採用のトリガー(2/4 ページ)
ロームはパワーMOSFETやIGBTなどのパワーデバイス分野で売り上げ規模を拡大させている。パワーデバイス市場では、後発のローム。なぜ、後発ながら、自動車や産業機器などの領域でビジネスを獲得できているのか。ローム役員に聞いた。
垂直統合を極める
EETJ 自動車、産業機器市場では、高い信頼性、品質が求められます。
東氏 後発ながら自動車、産業機器市場で、信頼を得る上で、創業来、ロームが行っている垂直統合型のモノづくりが役立っている。
ロームはシリコンのインゴットをはじめ、マスク、リードフレームなどの金型など、自社で作れる。他の半導体メーカーとは、真逆の垂直統合型の生産体制になっている。こうした生産体制であれば、自動車、産業機器で重視されるトレーサビリティに対する要求も、迅速に対応でき、品質の制御なども行いやすい。
もちろん、世の中と競争して、どうしても勝てない領域、工程については外部に委託するが、自動車や産業機器市場で競争力につながるような部分は垂直統合を極めていく。
他にも生産面では、RPS(=ロームプロダクションシステム)と呼ぶ生産革新活動を徹底し、無駄を省いた効率的な生産体制の構築を進めている。無駄を省くことは、効率向上とともに、品質向上にもつながる。
パワートレイン系へ浸透中
EETJ 自動車向けビジネスの状況を教えてください。
東氏 従来は、インフォテインメント機器やオーディオ機器向けに小信号ディスクリート、抵抗器が自動車向けの主力だったが、そこから次第にビジネスが拡大し、ディスクリートに加えて、パワーMOSFETがクラスタやボディー制御向けで採用されるようになった。そして、近年では、パワートレイン制御や安全走行系といったより本格的な車載領域で、SJ-MOSFET、SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)、IGBTなどを含め採用が始まった。パワートレイン制御や安全走行系での売り上げは今後、より本格化していく見通しだ。
EETJ ロームのパワーデバイスといえば、次世代パワーデバイス材料であるSiCを使用したSiCパワーデバイスのイメージが強いです。SiCパワーデバイスのビジネス状況はいかがですか。
東氏 電気自動車にSiC-SBDが採用されるなどし、SiCデバイスの外販市場ではおおよそ2割程度の世界シェアを獲得できていると思っている。ただ、現状の売り上げ額はわずかであり、パワーデバイス事業における売り上げの1つの柱になるのは2020〜2022年以降になるだろう。時間はかかる。
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