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オムロン、画像認識の“オープン化”で広がる可能性IoTデバイスの開発秘話(3)(1/2 ページ)

オムロンは2016年8月、組み込み機器に取り付けるだけで人の状態を認識する画像センサー「HVC-P2」を発表した。HVC-P2は、独自の画像センシング技術「OKAO Vision」の10種類のアルゴリズムと、カメラモジュールを一体化した「HVC(Human Vision Components)シリーズ」の1つ。HVCシリーズに共通するのは、“オープンイノベーション”を掲げていることにある。

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キーワードは“オープンイノベーション”


家族目線センサーを掲げる「HVC-C2W」 (クリックで拡大) 出典:オムロン

 当社の画像センシング技術を、もっと世界中に届けたかった――。

 オムロンは2016年8月、組み込み機器に取り付けるだけで人の状態を認識する画像センサー「HVC-P2」を発表した。HVC-P2は、2014年3月に発表した「HVC-P」の後継機モデル。長距離検出と広角検出タイプを選べるだけでなく、認識速度を最大10倍に向上している。あらゆる設備や機器のIoT(モノのインターネット)化に貢献するという。

 HVC-P2は、独自の画像センシング技術「OKAO Vision」の10種類のアルゴリズムと、カメラモジュールを一体化した「HVC(Human Vision Components)シリーズ」の1つだ。HVC-Pに加えて、「HVC-C1B」と「HVC-C2W」が発表されている。

 HVC-C1Bは、Bluetooth Low Energy経由で、スマートフォンやタブレットにセンシング情報を入出力できるプロトタイプ製品である。HVC-C2Wは、“家族目線”を掲げたコンシューマー向け製品。無線LAN接続に対応しているため、クラウドに送られた画像を専用のアプリから確認することが可能だ。赤ちゃんや高齢者、ペットの見守りとしての用途を想定している(関連記事:家族目線のカメラセンサー、暮らしを優しく見守る)。


取り付けるだけで人の状態を認識する画像センサー「HVC-P2」 (クリックで拡大) 出典:オムロン

 HVCシリーズに共通するのは、“オープンイノベーション*)”である点だ。オムロンは、HVCシリーズの用途についてハッカソンを開催したり、HVCシリーズのSDK(ソフトウェア開発キットを提供したりして、ユーザー自身にアプリを開発してもらっている。同社は、この取り組みを「SENSING EGG PROJECT」と呼んでいる。

*)社内外のリソースやアイデアを組み合わせて新しい技術やサービスを生みだすこと

 今回、同社アプリケーションオリエンティド事業部の商品開発課でHVC開発リーダーを務める真鍋誠一氏に、HVCシリーズが生まれたきっかけや、オープンイノベーションにおける取り組みと成果、今後の展開についてインタビューを行った。

5億ライセンスの出荷実績

 真鍋氏は、HVCシリーズを開発したきっかけについて、「OKAO Visionの裾野を広げたかった」と語る。同社のWebサイトによると、OKAO Visionは、老若男女、国籍問わず、さまざまな環境下における人画像をリアルタイムに検出、認識する画像センシング技術である。同社が、約20年にわたって開発を続けてきた技術で、顔や人の位置推定だけでなく、顔の器官や動きの検出、ペットの動き検出などの複数の機能を持つ。デジタルカメラやスマートフォンを中心に、これまでに5億ライセンスの出荷実績があるという。


「OKAO Vision」における性別・年齢推定のイメージ 出典:オムロン

 OKAO Visionの特長について、真鍋氏は「小型、高速、高性能の3つ」と語る。「OKAO Visionのエンジンは、組み込み用途で活用されており、メモリで処理が可能だ。IoT時代の画像処理は、データ全てをサーバに上げると、トラフィックが膨大してしまい、商用ベースとしてネットワークの信頼性が確保できない。サーバに上げる中で、タイムラグも生じてしまう。IoTでは、OKAO Visionのように組み込み機器で処理を行い、価値のあるデータのみをサーバに上げることが、主流の1つになると考えている」(真鍋氏)。

 ソフトウェアのライセンス提供で、ビジネス規模を成長させていたOKAO Vision。しかし、ライセンスの提供というビジネスでは、デジタルカメラやスマートフォンのように数量が多く出る顧客にしか届けられない。また、ソフトウェアの提供では、カメラを買うことから開発する必要があるため、使いこなしに手間が掛かる。そこで、OKAO Visionをスモールスタートで始められるよう、HVCシリーズが生まれている。

 「OKAO Visionで培った技術は、当社が持つ強みであり、スマートフォンやカメラ以外にも活用できると思っていた。もっと世界中の人に届けたかったのだ」(真鍋氏)

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