検索
連載

笑う人工知能 〜あなたは記事に踊らされている〜Over the AI ――AIの向こう側に(3)(7/8 ページ)

AI(人工知能)に関する記事は、メディアにあふれ返っています。私は「これらの記事では“人工知能”のことがさっぱり分からん」との結論に至りましたが、では、人工知能を技術的に理解している人は実際どれだけいるのでしょうか。ざっくり推定すると、なんと、例えば「深層学習」を理解している人は50万人のうち4人、という結果を得たのです。

Share
Tweet
LINE
Hatena

「浮気/性癖判定エキスパートシステム」で説明しよう

 さて、2つの推論方式をざっくりと理解して頂いたところで、エキスパートシステムの動作をお話します。

 ここでは、架空の「パートナーの浮気/性癖判定エキスパートシステム」を使います(残念ながら元ネタは、ネイト・シルバーさんの「シグナル&ノイズ」です。このネタ、いずれ、ベイジアンネットワークでも使います)。

エキスパートシステム

 さて、最初に「パートナーの浮気/性癖判定エキスパートシステム」に、以下の知識を与えます。この知識のことを、ここでは「ルール」ということにします。

ルール

 もちろん、コンピュータには、「パンティ」だの「浮気」だの「女装癖」だのは分かりませんので、"A","B","C"とでも置き換えておく必要があります(この事実だけで、エキスパートシステムに、「心」なんぞ、ひとかけらもないことは明らかです)。

 実際は、このようなルールを山のように追加していくと、ルールの間で矛盾が生じることがあります。ですので、ルールのためのルールも作っておく必要があります。例えば、最初にヒットしたルールを採用することにしたり、ルールに優先度をつけていたり、あるいはヒットしたルールをカウントしたり、など、いろいろやり方があります。

 はじめに、「前向き推論」の概要を示します。

前向き推論

 このように、事実をこのエキスパートシステムに入力すれば、答えが出てきます。

 このケースの場合では、「不明な休日の外出がある」と「助手席の位置がズレている」という事実をインプットすれば、「浮気」と「女装癖」の可能性を教えてくれることになります。

 次に、「後向き推論」の概要を示します。

後向き推論

 後向き推論は、前向き推論とは違って、まず仮説を作ります。上記のケースでは、「サプライズパーティーでの妻へのプレゼントを購入するために、夫は外泊をする」という仮説を作ります。

 この仮説をエキスパートシステムに入力すると、エキスパートシステムは、仮説を成立させるルールを探しまくります。結果として、そのようなルールが見つかれば仮説は採用、見つからなければ仮説は棄却されることになります。

 もっと単純に説明すれば、「前向き推論」で使った"IF と THEN"の順番を引っくり返せば、「後向き推論」になるという、乱暴な解釈でも構わないと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る