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データは語る、鉄道飛び込みの不気味な実態世界を「数字」で回してみよう(35) 人身事故(3/11 ページ)

「鉄道を使った飛び込み自殺」が減らないのなら、いかにしてそれを避けるか、というのが重要になります。そこで「ビッグデータ手動解析」と「人間知能“EBATA”」を駆使して、人身事故から逃れる方法を検証してみました。ところがその先には、がく然とする結果が待っていたのです。

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超過密! 日本のダイヤ

 こんにちは、江端智一です。

 今回は、まず、前回のコラム「「人身事故での遅延」が裁判沙汰にならない理由から見えた、鉄道会社の律義さ」の検討で分かってきた、

―― 鉄道会社には、「時刻表の通りに電車を運行させなければならない」という法律上の義務は全くない

ということと、それにもかかわらず、日本の鉄道会社の律義なまでの鉄道ダイヤ順守の理由について、もう少し突っ込んだ検討をしたみたいと思います。

 前回のコラムで、私は「西村京太郎トラベルミステリーが成立するのは、世界中で日本だけ」と述べ、日本の鉄道会社の律義さを称賛しました。

 そこで、実際に、各国の主要都市(最も鉄道交通の使用が激しいと思われる地区)の時刻表を調べて、その運行ダイヤの過密度をざっくり調べてみました。

 このように、日本だけが突出してダイヤの密度が高いことが分かります。

 ダイヤの密度が高くなると、同時に2つ以上の電車が入ることができなくなる区間(閉そく区間といいます)も短くなります。この閉そく区間には、運転手や車掌がどんなに頑張っても、2つ目の電車は突入できないようになっているのです(複数のシステムが、よってたかって、その2つ目の電車を強制的に停止させます)。

 当然、この閉そく区間のルールを守るために、電車の位置や速度を、緻密にリアルタイムで監視し続けなければなりません。

 私は数年前に、外国の鉄道運行管理システムの要件を算出していたことがあります。その時、私は、鉄道運行システムのコンピュータシステムの通信速度と計算能力は、ダイヤ密度におおむね比例する、という仮説を立てて検証作業を行っていました。

 例えば、上記の仮説が正しければ、サウジの運行管理システムであれば、日本のシステムの10分の1の通信速度および計算性能で足る、ということになります。

 日本では、当然、都市部のように過密なダイヤのところもあれば、そうでもないところ(いわゆるローカル線など)もあります。しかし、わざわざローカル線向けに、ルーズな鉄道管理システムを別に開発する必要はありませんので、同じシステムが納入されます。別段、同じシステムを導入しても、ローカル線で困ることにはならないからです。

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