データは語る、鉄道飛び込みの不気味な実態:世界を「数字」で回してみよう(35) 人身事故(4/11 ページ)
「鉄道を使った飛び込み自殺」が減らないのなら、いかにしてそれを避けるか、というのが重要になります。そこで「ビッグデータ手動解析」と「人間知能“EBATA”」を駆使して、人身事故から逃れる方法を検証してみました。ところがその先には、がく然とする結果が待っていたのです。
過密ダイヤは、日本の“ブラック企業体質”の表れか?
このように考えていくと、日本の列車のダイヤが、これほどまでに緻密に守られ続けている理由は、
(1)そのような緻密なダイヤを実現する運行管理システムが、既に開発され、日本全国に導入されているから
(2)そのような運行管理システムによって、私たちが、日本のどこにいても、そのような緻密なダイヤで鉄道が運行されることが、当たり前と思い込んでいるから
(3)そのような私たちの「当たり前であるとの思い込み」のプレッシャーに、鉄道会社が巻き込まれているから
という、極めて日本的な ―― 悪く言えば、「みんながひどい目にあっているなら、『しょうがないか』と思う」→「みんなが残業しているなら、私も残業する」→「他の会社(や地域)が定刻運行しているなら、私の会社(や地域)も定刻運行する」というブラック企業的な思考体系で、世界に冠たる日本の列車の定刻運行が実現されているとも考えられます。
そして、この定刻運行は、鉄道を利用する私たちの側の考え方にも影響を与えます。
私たち(江端を含む)は、2分、3分のダイヤの遅れにイライラし、10分を過ぎれば駅員に喰ってかかります。
そんな世界に、突然、暴力的に飛び込んでくる「飛び込み自殺」は、「みんながひどい目にあっているなら、『しょうがないか』と思う」、ブラック企業的思考では、到底解決できない、例外処理なのです。
私たちは ―― 私(江端)だけかもしれませんが ―― 「飛び込み自殺者」の苦しみや悲しみに思いをはせるより先に、ブラック企業的思考を発動して、『おい、お前。なに1人でラクになった挙げく、お前のそのツケをこっちによこしやがるんだ』という怒りに転じる訳です。
(というところで、本シリーズ第一回目にお願いしたアンケート結果を久々に公開します(ちなみに、まだ、アンケートは実施中です。アンケートに回答してくださる方はこちらからどうぞ)
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