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UKC、“3000億の壁”突破にはM&Aが不可欠半導体商社トップインタビュー UKC HD(1/2 ページ)

2016年になっても収まる気配がない、半導体業界に吹き荒れるM&Aの嵐。この業界再編は、半導体商社にとっても変革期を迎えたことを意味するだろう。そこで、EE Times Japanでは、各半導体商社のトップに今後の戦略を問うインタビュー企画を進めている。今回は、2016年4月に加賀電子との経営統合中止を発表したUKCホールディングス(UKC HD)社長の福寿幸男氏に聞いた。

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半導体商社は、業界再編の波にどう立ち向かうか

 世界に通用する半導体商社が日本で誕生していたはずだった――。

 2016年4月、経営統合することで基本合意していたソニー系半導体商社であるUKCホールディングスと、独立系半導体商社である加賀電子の両社は、「諸条件の合意に至らなかった」との理由で経営統合を中止した。当初の基本合意通りであれば、国内最大規模の半導体商社が今ごろ発足し、事業をスタートさせているはずだった。

 経営統合中止により、両社は戦略の変更を余儀なくされることになった。そこで、今回は、UKCホールディングの社長である福寿幸男氏にインタビューした。

効率よく規模を拡大するには、M&Aは必要不可欠


福寿幸男氏

EE Times Japan(以下、EETJ) 一時は、加賀電子と経営統合し、世界に通用する半導体商社、さらにいえば、売上高1兆円を超える“メガディストリビューター”を目指されました。現時点でも、M&Aによる事業拡大を模索されているのでしょうか。

福寿幸男氏(以下、福寿氏) 国内の半導体商社業界をみると、当社も含め売上高2000億〜3000億円ぐらいの範囲で、多くの商社がひしめいている。見方を変えれば、売上高2000億〜3000億円のところに“壁”が存在しているといえる。

 この壁を突破するならば、ダウントレンドにある国内半導体業界で普通のことをやっているだけでは打破できない。そして、その壁を打破するための1つの戦略として、加賀電子との経営統合があったわけだ。今時点では、有機的成長で壁を打破できないとはいわないが、人的リソースを考えると相当に難しい。5000億円や1兆円といった規模のビジネスを支えられるだけのリソースを育成、確保するには時間がかかる。そう考えれば、効率よく規模を拡大するには、M&Aをしていかなければならない。

 2014年ごろからM&Aの検討は続けており、共同出資によるジョイントベンチャーや、小額の出資によって緩いつながりを持つなどのさまざまな可能性も模索している。


2016年3月期を中心とした決算数値を基に作成された半導体商社の比較。加賀電子との経営統合が行われたら、国内最大規模の半導体商社となる見込みだった (クリックで拡大) 出典:UKCホールディングス

EETJ M&A戦略を除いた現状の経営戦略についてお聞かせください。

福寿氏 むやみに規模を拡大させるよりも、商社としての価値を高めていき、営業利益率3%の達成を1つの目標に掲げている。具体的には、半導体や部品単体ではなく、ソリューションで付加価値の高いサービスの提供を強化していく。

2016年度中の黒字化を目指すDDS事業

EETJ 2015年3月には、東京エレクトロンの子会社であるTokyo Electron Taiwanから、Dust Detection System(以下、DDS)事業を譲り受けられました。DDS事業もソリューション強化の一環ですか。

福寿氏 DDS事業は、太陽光パネル表面上の汚れや温度上昇などによる発電効率の劣化を測定するセンサーを内蔵する機器の開発、販売を行っている。そして、発電効率に関するデータなどを提供するソリューションサービスも模索しているものだ。

 DDS事業はとにかく市場が広い。そのため、この1年は市場の拡大が見込める北米や中東の展示会に参加することで、商談の数を増やすことに注力してきた。採算という観点では、もう少し時間がかかると思うが、2016年度中の黒字化を目指している。

EETJ 2014年には、ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)と業務資本提携を締結されました。その後の進捗はどうでしょうか。

福寿氏 DMPは3Dグラフィックス技術を生かしたLSIを開発しており、当社の販売チャンネルを活用して、アミューズメント向けに展開している状況だ。将来的には、ディープラーニング技術を活用した製品も開発テーマとなっている。

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