SanDiskが語る、半導体不揮発性メモリの開発史:福田昭のストレージ通信(42) 抵抗変化メモリの開発動向(1)(2/2 ページ)
今回からは、国際学会で語られたSanDiskの抵抗変化メモリ(ReRAM)の研究開発動向について紹介していく。まずは、約60年に及ぶ「不揮発性メモリの歴史」を振り返る。
フラッシュメモリの登場
この状況を打破したのが、東芝(当時)の舛岡富士雄氏である。EPROMと同じ1個のトランジスタで、電気的に書き換えが可能な不揮発性メモリ、フラッシュメモリを1984年に発明したのだ。舛岡氏は続いて改良版のフラッシュメモリ、「NANDフラッシュメモリ」を1987年に発明する。NANDフラッシュメモリは、メモリセルを構成するトランジスタは約2分の1個で、EPROMよりも原理的には製造コストが下がるという、革新的な構造を有していた。
NANDフラッシュメモリの「低コスト」という特長は破壊的な創造をもたらした。開発工程でUV-EPROMの代わりに使われるようになっただけでなく、フロッピーディスクを置き換え始めた。1994年にはSanDiskがNANDフラッシュメモリのメモリモジュール「CF(Compact Flash)」を開発する。1997年にはMMC(Multi Media Card)、2001年にはUSBメモリが登場した。
SSD(Solid State Drive)はどうなったのか。フラッシュメモリが登場する以前は、SSDとはほぼ、DRAMベースのドライブ(RAMディスク)と同義だった。このため、1991年にSanDiskがフラッシュメモリベースのSSDを初めて出荷したときには、「Flash-based SSD」と呼称していた。2003年にはフラッシュメモリベースのSSDの記憶容量は1TB(テラバイト)に達した。そしてSSDは、NANDフラッシュメモリをベースとするストレージを指す言葉となった。
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