SanDiskが語る、ストレージ・クラス・メモリの信頼性:福田昭のストレージ通信(45) 抵抗変化メモリの開発動向(4)(1/2 ページ)
SCMとはストレージ・クラス・メモリの略称で、性能的に外部記憶装置(ストレージ)と主記憶(メインメモリ)の間に位置するメモリである。前回は、SanDiskの講演から、SCMの性能とコストに関する比較をメモリセルレベルまで検討した。今回、信頼性について比較した部分をご紹介する。
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ストレージ・クラス・メモリ(SCM)の信頼性要求
半導体メモリの研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(IMW:International Memory Workshop)」のショートコース(2016年5月15日)から、SanDiskによる抵抗変化メモリ(ReRAM)の研究開発動向に関する講演概要をご紹介している。今回はシリーズの4回目に相当する。
講演者はスタッフエンジニアのYangyin CHEN氏、講演タイトルは「ReRAM for SCM application」である。タイトルにあるSCMとはストレージ・クラス・メモリ(storage class memory)の略称で、性能的に外部記憶装置(ストレージ)と主記憶(メインメモリ)の間に位置するメモリとされる。ここで性能とは、メインメモリよりもコスト(記憶容量当たりのコスト)が低く、ストレージよりも高速であることを意味する。
本シリーズの3回目である前回は、メモリ階層におけるSCM(ストレージ・クラス・メモリ)の位置付けについてご紹介した。今回は、その続きである。なお講演内容の理解を助けるため、一部、説明を補足している箇所がある。ご了承されたい。
書き換え可能回数は無限大が理想
前回では、SCM(ストレージ・クラス・メモリ)の性能とコストに関する比較をメモリセルレベルまで詳しく検討した。今回、信頼性について比較した講演部分をご紹介する。
半導体メモリの信頼性を決める要素はいくつか存在する。最も重要なのは、データを何回まで書き換えられるか(書き換え可能回数:Endurance)と、データをどのくらい長い間まで保存しておけるか(データ保持期間:Data Retention)である。
書き換え可能回数(Endurance)で見ると、DRAMはほぼ無限の書き換えが可能である。一応の目安としては10の15乗回という数値がある。これは1MHz(1秒間に100万回)の速度で書き換えを10年間ほど繰り返しても良品であることを保証することに相当する。
一方、NANDフラッシュメモリの書き換え可能回数は、半導体メモリとしてはあまり多くない。おおよそ1万回である。このため、NANDフラッシュメモリを使ったストレージでは、さまざまな工夫によって書き換えの寿命が尽きないようにしている。
SCM(ストレージ・クラス・メモリ)に求められる書き換え可能回数は、理想的には無限の回数だろう。ただし用途によっては100万回(10の6乗回)〜10億回(10の9乗回)の書き換え可能回数で十分となる。
データ保持期間は10年間が理想
データ保持時間(Data Retention)で見ると、DRAMは極めて短い。DRAMメモリセルの記憶素子であるキャパシターが電荷を蓄えておける時間は、長くても100ミリ秒である。そこで32ミリ秒あるいは64ミリ秒の周期で、DRAMは全ビットを再書き込み(リフレッシュ)している。リフレッシュはDRAMにとって不可欠な動作であり、消費電流を増加させる要因でもある。
NANDフラッシュメモリのデータ保持期間はかなり長い。10年間のデータ保持期間を保証する製品が標準的である。電源を切ってもデータは消えない。この利点(不揮発性)があるのでストレージと同様に使える。
SCM(ストレージ・クラス・メモリ)に求められるデータ保持期間は、理想的には10年間である。10年間のデータ保持期間があれば、NANDフラッシュメモリと同様に、ストレージとして使える。ただし、この特性も用途によっては、数時間、数日、数週間といった短い期間で十分になる。PCのメモリにおけるサスペンドやスリープなどのモードでは、数年間ものデータ保持期間はオーバースペックである。サスペンド期間に電源を落とせるだけでも、DRAMに比べると消費電流は大幅に減少する。メリットは少なくない。
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