SanDiskが語る、ストレージ・クラス・メモリの信頼性:福田昭のストレージ通信(45) 抵抗変化メモリの開発動向(4)(2/2 ページ)
SCMとはストレージ・クラス・メモリの略称で、性能的に外部記憶装置(ストレージ)と主記憶(メインメモリ)の間に位置するメモリである。前回は、SanDiskの講演から、SCMの性能とコストに関する比較をメモリセルレベルまで検討した。今回、信頼性について比較した部分をご紹介する。
多彩な記憶素子が共存
ここで、メモリ技術とストレージ技術を俯瞰(ふかん)してみよう。数多くの多彩な記憶素子が共存していることが分かる。最も古い記憶素子は磁気記憶であり、現在はHDDに使われている。標準的な半導体メモリは電子(および正孔)を記憶素子に使ってきた。DRAM、SRAM、紫外線消去型EPROM、フラッシュメモリなどである。
磁気と電子以外の記憶素子技術では、強誘電体の誘電分極を利用したキャパシターが最初だろう。ランダムアクセスと不揮発性を共存させた画期的なメモリ、強誘電体メモリ(FeRAM)として製品化された。ただし微細化が困難であるなどの理由により、小容量のメモリ製品にとどまっている。今のところはSCM(ストレージ・クラス・メモリ)の有力候補とはなっていない。
イオンの動きを利用した記憶素子は、抵抗変化メモリ(ReRAM)に使われている。カルコゲナイド合金の相変化を利用した記憶素子は、相変化メモリ(PCMあるいはPRAM)となった。電子スピンの注入による磁化反転を利用した記憶素子は、スピン注入型磁気メモリ(STT-MRAM)として磁気メモリの新しい候補となった。
強誘電体を除く新しいメモリ技術は全て、電子(電荷)の量ではなく、抵抗の値をデータの論理値に対応させている。微細化の寸法が10nm以下に進もうとしている現在、記憶素子が蓄えておける電子の数は10個未満になりつつある。ばらつきを考慮すると、電子を利用した記憶原理では微細化に対応できない。抵抗値をデータの記憶に利用するのは、必然的な流れともいえる。
(次回に続く)
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