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Qualcomm+NXPは怖くない、車載ルネサスの自負electronica 2016(2/3 ページ)

ルネサス エレクトロニクスは、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2016」(2016年11月8〜11日)に出展し、車載情報システム向けハイエンドSoCや、ADAS向け開発キットのデモを披露している。車載半導体メーカーのM&Aが続く中、ルネサスの強みは何なのか。

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自動運転向けECUソリューション

 鈴木氏は、「自動運転の各レイヤーに必要な技術を網羅していることも、当社の強み」と述べる。各レイヤーとは具体的には、カメラやレーダー、V2X(Vehicle to Everything)を使う「センシング(見る)」、それらから得たデータを統合して自動運転のルートなどを決める「コグニティブ(考える)」、車載インフォテインメントやドライバーのモニタリングを行う「ヒューマン・インタフェース(感じる)」、ブレーキングやステアリング、エンジンなどの「コントロール(操作する)」である。鈴木氏は、「ヒューマン・インタフェースとコントロールに使うマイコン『RH850』やR-Carの量産実績だけが注目されがちだが、センシングのところ、つまり車載カメラやレーダー向けのRH850やR-Carでもかなり受注が取れている。とりわけ欧州では極めて好調だ」と述べる。

 自動運転技術において重要な課題となっているのがソフトウェア開発だ。ソフトウェアが大規模化、複雑化していて、例えば高級車のソフトウェア行数は、2020年には、2000年の約300倍になるとの予測もある。鈴木氏は「ソフトウェア開発の量があまりにも多いので、これまではスマートフォンやテレビ、サーバ、クラウドなど向けのソフトウェアを開発していたエンジニアたちが、どんどん車載向けソフトウェアの開発に携わるようになっている」と語る。同氏は「優れたソフトウェアエンジニアは、ウクライナやブルガリアなど東ヨーロッパに多い」と続け、ソフトウェア開発の点からみても欧州が重要な場所であることを示した。

 ルネサスは2016年10月に、R-Car H3と、シャシー制御用ハイエンドマイコン「RH850/P1H-C」を搭載した「HAD(高度自動運転:Highly Automated Driving)ソリューションキット」を発表した。実車での研究開発や評価試験のスピードを加速させることが狙いだ。鈴木氏によると、2017年1月に米国ラスベガスで開催される「CES 2017」では、HADソリューションキットを使い、実車を自動運転で動かすデモを披露する予定だという。

Qualcomm+NXPにも「恐れはない」

 2016年10月、QualcommがNXPを買収すると発表した。2015年における両社の自動車関連の売上高を合計すると、約37億米ドルになる(関連記事:QualcommのNXP買収、業界に及ぼす影響)。車載半導体サプライヤーランキング2位のInfineonや3位のルネサスとは約10億米ドルもの差がつくことになる。

 今回の買収についてElsner氏は、「QualcommもNXPも大手メーカーだが、われわれには、“より車載専用のチップ”を開発してきたという自負がある。競争は厳しくなるだろうし、(新生)Qualcommの動きを慎重に見ていくつもりだが、恐れはない。ルネサスは今後も車載に特化した製品を開発していくし、車載半導体が中核事業であることは変わらない」と述べ、「車載関連の売上高の規模」と「どれだけ車載に特化した製品を提供できるか」は、必ずしもイコールではないと示唆した。


Renesas Electronics EuropeのJean-Francois Chouteau氏

 鈴木氏は、「オランダと南カリフォルニアの企業文化や物の考え方は、非常に異なる。買収後の両社の統合はなかなか難しいものになるのではないか」との見解を示す。車載情報システム事業部の副事業部長を務める、Renesas Electronics EuropeのJean-Francois Chouteau氏は、「買収後は、製品ラインアップや開発計画を調整する必要が出てくるが、これは時間のかかる作業だ。こうした調整が行われている間にも、R-CarやRH850といったわれわれの車載向け製品は進化していくわけで、当社の製品のデザイン・インが増えていくだろうとみている」と述べる。

 さらに鈴木氏は、一例としてNXPのアプリケーションプロセッサである「i.MX 6」を挙げた。i.MX 6は旧Freescale Semiconductor(フリースケール・セミコンダクター)の製品である。同氏は「i.MX 6は非常に優れた製品だが、その次世代品が出てくるまでに一体何年かかっているのか考えてみてほしい」と述べる。i.MX 6の量産が開始されたのは2012年。「i.MX 7」は2015年に提供が開始され、「i.MX 8」は2016年後半にも市場に投入される見通しだ。鈴木氏は「i.MX 6の性能は、R-Carの第1世代品と同等だ」と述べ、買収に関わるさまざまな調整作業が開発の遅れを招く要因になりかねないことを示唆した。「顧客はその遅れを待ってくれない。実際、i.MXからR-Carに切り替えたいという顧客も存在する」(同氏)

 Elsner氏は、「われわれは、車載向け製品、車載向けビジネスについて知り尽くしている」と述べ、その結果が、拡張性や低消費電力、187社に及ぶR-Carエコシステムのパートナー企業といった強みとなって表れていることを強調した。

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