検索
特集

車載と産業に注力するルネサス、成長の鍵握る欧州成長戦略にマッチした土壌(1/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスの欧州法人Renesas Electronics Europe(REE)では、売上高の3分の2を車載分野、3分の1を産業分野が占めている。REEでは今後、車載や産業向け製品の他、組み込み機器向け設計プラットフォーム「Synergy」の成長が期待できるとみている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

ルネサス欧州法人の果たす役割


「electronica 2016」のルネサスのブース

 ルネサス エレクトロニクスは2016年11月2日に中期成長戦略を発表し、注力分野として車載、産業、汎用領域に投資を続けていくと語った(関連記事:ルネサス、中期経営数値目標を上方修正)。そのルネサスにとって、欧州法人であるRenesas Electronics Europe(以下、REE)は極めて重要な拠点だ。欧州は自動車および産業分野が特に活発だからである。現在、REEの売上高は、ルネサス全体の売上高の15%を占めている。15%のうち、3分の2は自動車、3分の1は産業という比率になっている。

 2016年4月にREEのプレジデントに就任したMichael Hannawald氏は、REEが果たすべき役割について、「REEは伝統的に、機器メーカーと直接的なビジネスを行ってきた。顧客に会って、当社の製品の強みや価値を直接説明したり、販売後のサポートしたりしてきた。欧州においてマイコン『RL78ファミリー』や『RXファミリー』が他の地域よりも成功しているのは、そうした顧客との関係性が背景にあると考えられる。REEは今後も、それを強みに、特に車載分野でデザイン・インを増やすことでルネサスに貢献できるだろう」と話す。さらにHannawald氏は、車載ソフトウェアの標準化を進めるAUTOSARなど、欧州が主導する規格も多いと述べ、そうした動向を“地元”で見守ることができるという強みをREEは持っていると強調した。


REEのプレジデント兼ルネサス エレクトロニクス執行役員を務めるMichael Hannawald氏

 欧州では特にADAS(先進運転支援システム)市場の成長が期待されている。ルネサスは、「ADAS向けに、センシングから判断、制御の部分までの技術を包括的に提供できることが強み」だと主張する。Hannawald氏は「車載インフォテインメントシステム向けSoC『R-Car』と、車載マイコンの『RH850』がやはり欧州でも強いバックボーンになる」と述べる。ルネサス 第一ソリューション事業本部 車載情報ソリューション事業部 事業部長を務める鈴木正宏氏も、欧州市場におけるルネサスの車載事業は「絶好調だ」と述べている(関連記事:Qualcomm+NXPは怖くない、車載ルネサスの自負)。

 大きな話題となったQulacommによるNXP Semiconductorsの買収についても、「欧州市場への影響がそれほどあるとは思えない」と、動じない。他社のM&Aよりも、顧客のニーズに合った適切な製品を適切な価格で提供し、母国語(ドイツであればドイツ語、イタリアであればイタリア語)での強固なサポート体制を維持することの方が重要だと強調した。

 一方の産業分野については、やはりIndustrie 4.0(インダストリー4.0)の存在が大きいとHannawald氏は述べる。「FA(ファクトリーオートメーション)分野ではドイツにSiemens(シーメンス)があり、スマートメーターの分野でも欧州に幾つか大手メーカーがある。これらの市場はIndustrie 4.0によってけん引されている。この点でも、ドイツに拠点を持つREEは大きく貢献できるだろう」(同氏)。EC(欧州委員会)は「2020年までに、72%の欧州の消費者がスマートメーターを導入するだろう」と予測している(参考)。ルネサスは2016年8月に、スマートメーター向け低消費電力マイコン「RL78/I1C」を発表するなど、スマートメーター向けの事業も強化している。

 さらに、FAとスマートメーターは、IoT(モノのインターネット)/組み込み機器設計プラットフォーム「Renesas Synergyプラットフォーム(以下、Synergy)」のターゲット分野でもある。Synergyは、2016年2月に欧州で本格的に導入を開始して以降、そのエコシステムを順調に拡大しつつある。Synergyの売上高の約40%は欧州からきている。Hannawald氏のSynergyへの期待値は高く、「RL78やRXはこれまでと変わらずわれわれにとって土台となる製品群だが、今後数年以内には、欧州市場ではSynergyの売上高がRL78/RXを追い抜く可能性もある」(同氏)との見解を示した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る