車載と産業に注力するルネサス、成長の鍵握る欧州:成長戦略にマッチした土壌(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの欧州法人Renesas Electronics Europe(REE)では、売上高の3分の2を車載分野、3分の1を産業分野が占めている。REEでは今後、車載や産業向け製品の他、組み込み機器向け設計プラットフォーム「Synergy」の成長が期待できるとみている。
Intersilとのシナジー効果は、未知数
ルネサスは2016年9月13日、米国のIntersil(インターシル)を32億1900万米ドル(約3274億円)で買収すると発表した。ルネサスは、両社の製品群は補完的であり、車載、スマートホーム、スマートファクトリーといった分野で総合的な製品を提案できるとしている。Hannawald氏は、「買収が完了していないので詳細は明かせないが、Intersilの存在感は、米国や中国に比べて欧州ではやや薄い。そのIntersilとREEでどのようなシナジー効果を見いだせるのか、そしてそれを欧州の顧客にどう訴求していくかについて、今後戦略を練っていく」と述べた。
Hannawald氏は、今後のREEの成長を担う鍵になる製品として、R-CarやSynergyの他、産業機器向けの「RZ/G Linuxプラットフォーム」を挙げた。
RZ/G Linuxプラットフォームは2016年10月に発表されたばかりの製品で、産業機器向けの高性能組み込みプロセッサとともに動作検証済みのLinuxとミドルウェア群および開発環境などを提供するものである。コンセプトはSynergyと同じで、これまでリーチできなかったような中小企業まで顧客層を広げることが目的の1つである。
ただし、RZ/G Linuxプラットフォームは欧州向けには、まだ公式に発表されていない。REEのIndustrial & Communications Business Groupでシニアマネジャーを務めるMohammed Dogar氏によると、欧州のパートナーをRZ/G Linuxプラットフォームのエコシステムに取り組むべく準備を進めている段階で、2017年初頭に発表する予定だとしている。Dogar氏は「SynergyとRZ/G Linuxプラットフォームの最大の違いは、Synergyがルネサス主導なのに対して、RZ/G Linuxプラットフォームは、よりオープンなコミュニティーを持つLinuxをベースにしている点だ。Synergyについてはルネサスが全てコントロールできるが、Linuxにはさまざまな変更が動的に加えられる。これはわれわれがコントロールできるものではない。Linuxのコミュニティーをどうサポートできるかが、欧州でもRZ/G Linuxプラットフォームが受け入れられる条件になるだろう」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Qualcomm+NXPは怖くない、車載ルネサスの自負
ルネサス エレクトロニクスは、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「electronica 2016」(2016年11月8〜11日)に出展し、車載情報システム向けハイエンドSoCや、ADAS向け開発キットのデモを披露している。車載半導体メーカーのM&Aが続く中、ルネサスの強みは何なのか。 - ルネサスが見据える2020年、車載/汎用事業の行方
ルネサス エレクトロニクスは2016年11月、2016年12月期第2四半期の業績とともに、2020年ごろに向けた車載事業と産業・ブロードベース事業に関する中期成長戦略を発表した。 - EtherCATって結局なに? 〜「ご主人様」と「メイド」で説明しよう
何十台ものロボットが高速、かつ正確に動き、次々とモノを製造していく――。このような、いわゆるファクトリオートメーション(FA)を支えるネットワーク方式の1つに、EtherCATがあります。EtherCATは、高速・高精度にマシンを制御する産業向けのネットワークですが、私は、無謀(?)にも、これを使って自宅のホームセキュリティシステムを構築してみようと思い付いたのです。本連載では、その“手法”の全てを公開します。 - シーメンスがメンターを45億ドルで買収へ
ドイツSiemens(シーメンス)が、Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)を45億米ドルで買収すると発表した。