DSRCは手詰まり感を否めず? Qualcomm幹部が指摘:NXPが推進してきたV2X技術(2/2 ページ)
NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)を買収するQualcomm(クアルコム)だが、V2X(Vehicle-to-Everything)において両社が推進する技術は異なる。NXPはDSRC(狭域通信)を、QualcommはセルラーV2Xを支持してきた。NXPを買収する今、Qualcommは、これについてどう考えているのか。
DSRCはセルラー通信よりも劣っている?
EE Times LTE Directは、現在広く普及しているのか。
Flore氏 D2D通信は、安全用途向けとして注目を集めている。今後、警察をはじめとするさまざまな機関からの需要が高まっていくだろう。
EE Times その他のLTE Directの用途は。
Flore氏 LTE Directは基本的に、常時オンの検出プラットフォームである。セットトップボックスなどの近接ネットワーク端末向けに、高い電力効率で柔軟にコンテンツを配信することができる。
EE Times 既に実用化されているのか。
Flore氏 実用化に関する強い要望は今のところないため、実用化には至っていない。
EE Times それでもLTE Directは、V2X技術として実現可能なのか。
Malladi氏 携帯電話機はこれまでに、著しい進化を遂げてきた。現在のスマートフォンは、10年前の携帯電話機とは全くの別物だ。このためセルラーネットワークでは、さまざまな技術革新が進んできた。スマートフォンが自律的に相互検出できるということは、基本的に自動車も相互検出が可能だということだ。
EE Times V2Xに関して、DSRCがセルラー通信よりも劣っていると見なす根拠は。
Malladi氏 DSRCは、10年以上も前に開発された技術だ。その当時、最先端技術として、メッセージング機能や前方衝突警報、滑りやすい路面上での非常ブレーキ警告など、V2V規格を定義する上での重要な役目を果たした。しかし、DSRCの開発作業は既に完了し、後に続く取り組みもないため、DSRCは行き詰まった状態にある。
一方、セルラーV2Xは、セルラー技術の進展に伴い、進化し続けている。例えばLTE Directは、大きなレイテンシを発生させることなく、安全用途向けとして使用することが可能だ。ネットワーク接続する時間がない場合に最適だといえる。最先端のコーデイング技術を利用して、10年前よりも高性能なプロトコルを提供することができる。
EE Times LTEベースのV2X規格について、現在の位置付けは。
Flore氏 セルラーベースのV2X規格は、3GPPの管理下にある。LTEベースのV2Xに関しては、3GPPが2016年9月に、初期段階のセルラーV2X規格をRelease 14で採用したばかりだ。
EE Times “初期段階”ということは、策定が完了したわけではないのか。
Flore氏 V2V通信の基本的な安全機能の開発に注力してきた取り組みが、2016年9月に完了した。しかし当社は、V2Xの別の運用シナリオにも対応できるよう、さらなる性能向上に取り組んでいる。2017年3月をメドに完成させ、Release 14で採用される予定だ。
EE Times セルラーV2Xに関する最初の決断には、Release 14との関連でどのような内容が含まれるのか。
Flore 2016年9月に採用されたのは全て、基本的な安全機能だ。現在、DSRCが提供する機能とマッチングさせているところだ。車載用途向けに機能が強化された、新しいD2Dインタフェースが導入されたからだ。
EE Times 3GPP主導の下、セルラーV2Xは、Release 14、Release 15(2018年9月発行予定)およびRelease 16(2020年3月発行予定)の中でどのように進化していくのか。
Flore氏 Release 15では、V2Xに向けた新しい無線技術は発表されないだろう。Release 15では、ユースケースやアプリケーションに、より主眼が置かれると考えられる。現在のロードマップでは、V2X向けの5G(第5世代移動通信)規格はRelease 16で初めて採用される見込みだ。ここでは、既存のセルラーV2Xとの互換性を維持しつつ、V2X向けのより強力な機能が追加される予定である。
編集注:)米国EE Timesで同記事が公開された後、Qualcommは、同社がDSRCとセルラーLTEの両方に注力する戦略だと強調した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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