車載市場での存在感強化を狙うIntelの戦略:過熱する自動運転向けIC市場(1/2 ページ)
車載向けIC市場におけるIntelの存在感は、この1年半ほどで変わってきたのではないだろうか。とりわけ自動運転向けチップやプラットフォームの分野では、自動車メーカーやティア1サプライヤー、半導体メーカー、ソフトウェアメーカーなどの思惑が入り乱れているが、そうした中でIntelはどのように動いているのだろうか。
車載市場での知名度が上昇?
Intelは、自動車市場向けブレインチップのシェア獲得をめぐる競争において、勝利を得ることができるのだろうか。
18カ月前であれば、「そううまくはいかないだろう」という答えが返ってきたかもしれない。Intelは、自動車市場に対して並外れた野心を抱いていたが、その見通しは非常に暗いものだった。
しかし、状況は次第に変化してきた。Intelは、ブレインチップ市場において優位性を確立するには至っていないが、自動車メーカーやティア1サプライヤーの間でマインドシェア(ブランドなどの注目度)を獲得するようになったのだ。このため、これまで平穏を維持してきた自動車技術サプライチェーンが、混乱の様相を呈してきている。
自動車のティア1サプライヤーであるDelphi Automotive(以下、Delphi)は2016年11月、米国ペンシルベニア州ピッツバーグで行われたイベントにおいて、同社の自動運転車向けプラットフォームに、IntelのチップとMobileyeのビジョンSoC(System on Chip)を採用したと発表した。
Intelは2016年11月29日に、EE Timesの取材に応じ、同社のチップがDelphiの自動運転車の試験車に搭載されていることを認めている。しかしIntelは、「DelphiとMobileye、Intelの3社が新たな協業体制を構築か」と沸き立つメディアの見解については、否定している。
Intelの広報担当者は、「パートナー提携を発表する予定はない」と語る。
しかし業界観測筋は、Delphiから得た情報により、半導体メーカーが自動運転車プラットフォーム市場において顧客獲得をめぐる争いを繰り広げる中、その裏舞台で何が起こっているのかを垣間見ることができたようだ。
Intelの車載向けチップとは
例えば、現在特に注目されているのが、Intelが自動運転車向けプラットフォーム市場において、どのような種類のチップを提供するつもりなのかという点だ。そのチップは、Intelが2016年初めに発表したBMWとMobileyeとの協業によって、開発を進めていると報じられているSoCとは、全く別の物なのだろうか。
また、これによってIntelは、Audiが開発する中央制御ユニット「zFAS」からNVIDIAを追い出そうとしているのだろうか。Audiは、DelphiやMobileye、NVIDIAなどと共同でzFASの開発を進めている。
さらに、Mobileyeが、Intelと協業することによって“両面作戦”を採っているように見えることから、これまで長期にわたって維持されてきたMobileyeとSTMicroelectronicsとの協業関係が、危機にさらされることになるのだろうか。
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