「日本の顧客のために」を貫き通す商社:半導体商社トップインタビュー 丸文(1/2 ページ)
再編が進み、急速に変ぼうを遂げつつある半導体業界。半導体製品を扱う商社にも変化の波が押し寄せつつある。そうした中で、EE Times Japanでは、各半導体商社のトップに今後の戦略を問うインタビュー企画を進めている。今回は、2016年3月期に過去最高売上高を更新するなど近年成長を続ける丸文の社長である水野象司氏に聞く。
Arrowと合弁の海外事業が安定成長を先導
丸文は、2016年3月期に過去最高となる売上高2795億7100万円を達成するなど、近年成長を続けている。こうした成長を実現できた要因として社長を務める水野象司氏はためらいなく、世界屈指のメガディストリビューターである米Arrow Electronics(アロー・エレクトロニクス/以下、Arrow)と合弁で展開する海外事業での成功を挙げる。
丸文は、なぜ海外で単独事業を行わずメガディストリビューターと手を組むのか。そして、なぜ、成功に至っているのか――。M&A戦略なども含め、水野氏に丸文の経営戦略について聞いた。
海外売り上げ比率は7年で20%から50%に
EE Times Japan(以下、EETJ) 過去最高売上高を更新されるなど、近年成長が続いています。こうした安定した事業成長を実現できている要因はどの辺りにあると分析されていますか。
水野象司氏 成長を持続できた要因としては、為替が円安傾向に動いたことや、自動車や産業機器に注力する戦略を着実に実施してきたことなどが挙げられるが、その中で最も大きな要因は、Arrowと合弁で進めてきた海外事業の存在が何より大きいと考えている。7年ほど前は、20%程度だった海外売り上げ比率は、2016年3月期には50%に達している。
EETJ Arrowと合弁で展開されている海外事業について、教えてください。
水野氏 Arrowと合弁という形で海外事業を開始したのは1998年からだ。世界有数の大手半導体/電子部品商社であるArrowはその当時、恐らくは、われわれ丸文を買収し日本市場に進出しようという狙いもあって、われわれとの連携を模索していたと思われるが、互いに尊重し、認め合った結果、それぞれが50%ずつ出資する対等な関係で合弁会社「丸文アローアジア/丸文アローUSA」(以下、丸文アロー)を設立した。
丸文アローの役割は明確で『日系顧客の海外でのビジネスをサポートすること』。日系以外の現地顧客は、Arrowが担当する。
明快な役割分担
EETJ 丸文単独で、海外事業を展開するという選択肢もある中で、合弁で展開されている理由をお聞かせください。
水野氏 丸文の役割は“日本の顧客を支援すること”にある。
日系顧客の海外ビジネスに対し、十分なサポートを提供するには一定のインフラを整備する必要がある。ただ、そうしたインフラを維持、拡大していくには、日系顧客だけでは事業規模が足りず、現地顧客とのビジネスを手掛ける必要性が生じることになる。
Arrowとの合弁では、Arrowの世界85の国・地域に及ぶ460拠点のインフラを活用できる他、Arrowの正規に取り扱う約600社の商材も(海外で)日系顧客に対し紹介、販売できる。Arrowとの合弁であれば、充実したサポートを日系顧客に特化して提供できるという利点があり、これが丸文のコアコンピタンス、強み。この考えは、合弁開始時から変わりなく、Arrowも認めている点だ。
合弁開始から、これまでの17年間で、日系企業の海外ビジネス移管が進み、昨今では海外で設計、開発を行い生産に至るというケースも多い。物流インフラはもとより、Arrowの充実した商材やエンジニアリソースを活用した技術提案なども展開し、海外売上高の40%ほどは、海外でデザインインした案件の売上高であり、昨今の海外事業拡大のけん引役の1つになっている。
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