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SanDiskが語る、抵抗変化メモリの抵抗値変化:福田昭のストレージ通信(51) 抵抗変化メモリの開発動向(10)(2/2 ページ)
今回は、抵抗変化メモリ(ReRAM)の抵抗値が書き込み後に変化する現象(リラクゼーション)について報告する。十分な書き込み電流を確保すれば抵抗値は安定するが、当然、消費電力は増える。抵抗値の変化を抑えつつ、低い消費電力も実現するにはスイッチング原理の見直しが効果的だ。
OXRAMとCBRAMは類似の傾向を示す
抵抗変化メモリ(ReRAM)はスイッチング原理の違いにより、OXRAM(Oxide-based RAM)とCBRAM(Conductive Bridge RAM)に大きく分かれる。OXRAMは記憶層に酸化物を採用しており、酸素欠陥あるいは酸素イオンの移動によって抵抗値を制御する。CBRAMは記憶層に絶縁物を採用しており、金属イオンの移動によって絶縁層内に導電性フィラメントを形成することで抵抗値を下げる。
OXRAMとCBRAMのいずれも、書き込み電流が低いと抵抗値の変化が大きい傾向がある。また、メモリセルの特性の違いにも依存する。書き込み直後の読み出し電流が低いメモリセルほど、抵抗値が短時間に上昇する度合いが強い。
スイッチング原理の変更で抵抗値の変化を減らす
スイッチング原理を見直すことで、小さな抵抗値変化と低い書き込み電流と両立させることは可能だ。例えばimecとルーベン・カトリック大学が共同で開発したVMCO(Vacancy-Modulated Conductive Oxide) RAMは、10μAと低めの書き込み電流で読み出し不良のないメモリセルを実現できている。
スイッチング原理の違いによる、抵抗値変化の違い。左は既出のOXRAM。書き込み電流は50μA。右はVMCO(Vacancy-Modulated Conductive Oxide) RAM。書き込み電流が10μAと低くなっているにもかかわらず、抵抗値の変化が小さい。出典:SanDisk(クリックで拡大)
(次回に続く)
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