投資ファンドによるLattice買収に暗雲(後編):中国軍に技術が転用される恐れ?
米Lattice Semiconductor(ラティス・セミコンダクター)を13億米ドルで買収すると発表した未公開株式投資ファンドCanyon Bridge Capital Partners。だが、中国政府がCanyon Bridgeに資金を提供していることが判明したことから、米規制当局が「待った」をかけている。この買収には2つの問題があると考えられるが、後編では、この2つ目について検討してみたい。
Lattice買収、2つ目の問題点
Canyon Bridge Capital Partners(以下、Canyon Bridge)によるLattice Semiconductorの買収において、2つ目の問題点は、この買収によってCanyon Bridgeが獲得した技術が中国の軍部に使われる可能性があることだ。
米国の市場調査会社であるIC Insightsでマーケットリサーチ担当シニアアナリストを務めるRob Lineback氏は、EE Timesに対し、「Lattice Semiconductorは、(少なくとも2010〜2012年にかけて)軍需産業や宇宙開発事業にPLD(Programmable Logic Device)を提供していた」と語った。
Lineback氏は、2012年のFBI(連邦捜査局)捜査に触れた。これは、ニューヨークで行われたおとり捜査である。中国で軍事目的で使用するためにPLDを購入したとして、2人の中国国籍の人物が起訴されている。
2人の中国人は、米国の輸出管理規制に違反して商品を密輸し、マネーロンダリング(資金洗浄)を画策したとして12件の容疑で起訴された。FBIファイルによると、このうち10件は、軍民両用のPLDの入手計画に関連したマネーロンダリングの容疑だったという。密輸されたPLDは、米国オレゴン州ヒルズバロにあるLattice Semiconductorで製造されたもので、拡張温度範囲で動作可能な軍用規格に対応した製品だった。
Lineback氏はまた、「Lattice Semiconductorは2010年に行った企業プレゼンテーションで、レーダーやソナー、セキュア通信、ナビゲーションシステムなどにおいて車載および軍事用のアプリケーションの開発に従事していると述べていた」と指摘した。
ただし、Lattice Semiconductorは2012年1月に、標準米軍図面(SMD)製品ラインを米国の電子部品商社であるArrow Electronicsに譲渡したと発表している。Lineback氏は、「これらの製品には、SPLD(Simple PLD)だけでなく複雑なCPLD(Complex PLD)も含まれる。Lattice Semiconductorは2011年に、これらの軍用PLDの製造を中止すると発表していた」と説明している。
Lattice Semiconductorは現在、軍事用の製品は製造していないといわれている。ただし、このことは必ずしも軍民両用の技術を所有していないことの証明にはならない。
Lineback氏は、「Lattice Semiconductorは近年、PLD以外にも多くの製品を手掛けている。2015年にSilicon Imageを6億660万米ドルで買収してからは特に、製品ラインアップを広げている。同社はSilicon Imageの買収によって、無線通信技術とIC製品、Silicon Imageが2011年に買収したミリ波技術を手掛けるSiBEAMを獲得した」と指摘している。
同氏はさらに、「Lattice Semiconductorは現在、5G(第5世代移動通信)やIoT(モノのインターネット)を含む最先端の高速通信とミリ波技術に注力している。こうした技術は機密技術に通じるとも考えられる」と付け加えた。
Lineback氏は、「さまざまな“モノ”がハッキングされる脅威やインターネットセキュリティのリスクに関するニュースの増加に伴い、米国がこうした技術を国益として保護すべきだと考える可能性もある」との見解を示した。
同氏は、「もちろん、外国企業および外国政府による米国企業の買収の行方は、次期トランプ政権が半導体のM&Aをどのように捉えるかにかかっている。米国の先行きは、明らかに不透明さを増している」と結んだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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