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450人が去った会社――改革の本番はむしろこれから“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日(7)(1/4 ページ)

湘南エレクトロニクスでは、ついに希望退職の日を迎えた。会社を去ったのは最終的に450人。だが、「社内改革」という意味ではむしろこれからの方が本番だった。会社再建に向けてどう青写真を描くべきか……。悩む須藤に、追い打ちをかけるように一報が入る――。

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「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー

これまでのお話

映像機器関連の開発、販売を手掛ける湘南エレクトロニクス(湘エレ)。ある朝、同社が社運をかけて開発した最新のデジタルビデオカメラについて顧客から1本のクレームが入る。そのクレームが引き金となり、ついには全社員の4分の1に当たる500人を削減するという経営刷新計画が始まった。湘エレの中堅エンジニア須藤は、容赦なく始まったこの計画の波に翻ろうされながらも、会社を何とか変えようと、1人立ち上がる。そして、自分と同じ志を持っていると思われる“仲間”を集め、自社再建に向けてスタートを切ったのだが……。





本連載の人物相関図(クリックで拡大)

そして450人が会社を去っていった

 湘エレ(湘南エレクトロニクス)の経営層が経営刷新計画を打ち出して3カ月、希望退職の期日を迎えた。500人の応募対象者に対し、最終的に450人余りが手を挙げ、11月末日をもって会社を去った。

 退職金の上増し分は勤続年数に比例しているため、早期退職に手を挙げた社員は、年齢の高いベテラン勢が多かった。その中には須藤が新人のころに、あれこれと面倒を見てくれた製造現場のベテランたちも多く含まれていた。「お前ら開発がいいものを設計すれば、後は俺たち製造が最高のものに仕上げてやる」「いいか、ちょっとこれを見てみろ。図面だけでモノができると思うな。製造のプロセスを頭にたたき込んで設計しろ!」……振り返ればたくさん怒られながらも、現場からは山ほど学ばせてもらった。お世話になった人たちがいなくなることは須藤たちにとってはつらいことだった。辞めていったベテラン社員も、定年まで勤めるつもりでいたに違いない。

 希望退職者の手続きや再就職支援に奔走していた人事課の三井課長も、ほっと胸をなでおろしていたが、須藤と同じで複雑な心境だった。本当に大変になるのはこれからだということを分かっていたからだ。

 幸か不幸か、須藤をはじめ、同期や職場の仲間はほとんど、残っている。全社員が希望退職の対象であったにもかかわらず、年齢層が比較的高い社員が去っていったため、これは製造部門や管理部門の“肩たたき”だったのではないかとすら思える。その一方で、研究所では、大学院を卒業した高学歴な20代の若手研究者が軒並み退職した。こうした若手は、基礎研究を重視せず短期間で成果を挙げることを要求される事業重視の風潮に嫌気がさしたのかもしれない。

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