車載好調の理由からM&Aまで、ルネサスに聞く:震災後にシェアを失うも回復基調(1/2 ページ)
NXP SemiconductorsとFreescale Semiconductorが統合作業を進める中、車載マイコンおよびSoCの市場シェアを伸ばしていたルネサス エレクトロニクス。同社の第一ソリューション事業本部 車載情報ソリューション事業部で事業部長を務める鈴木正宏氏に、ルネサスの車載向け製品や、Samsung ElectronicsによるHarman International買収について話を聞いた。
ルネサスの車載事業、好調の理由は?
EE Times ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は、車載コックピットとインスツルメントクラスタ分野で特に堅調に成長しているということですが、勝因は何だとお考えですか。
鈴木正宏氏 ライバル企業が製品ラインの刷新を図っている間に生じた市場の隙間を狙ったことだ。特にインフォテインメントクラスタでは、中国と欧州の自動車メーカーからのグラフィックス処理に対する需要増にうまく対応できた。
EE Times 2011年の東日本大震災後、日本の車載市場におけるルネサスのシェアは、旧Freescale SemiconductorやST Microelectronicsといった海外の車載チップベンダーにかなり奪われました。
鈴木氏 一時的にかなりのシェアを失い、2013年に最も業績が悪化したが、そこから抜け出して勢いに乗ることができた。国外の市場にも積極的に参入している。
EE Times ライバル企業の新製品不足以外に、ルネサスが堅調である理由を教えてください。
鈴木氏 自動車メーカーが一番投資しているのはどの分野かを考えると、その答えが見えてくる。
EE Times パワートレインでしょうか。
鈴木氏 そうだった時代もあるが、現在は違う。自動車メーカーは、ADAS(先進運転支援システム)やハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)の設計に、より多くのリソースを割いている。自動車メーカーは、ECU(車載用電子制御ユニット)などの車載システムの有効性を認識しながらも、自社で開発する余裕はない。当社がデザインウィンを獲得できた背景には、こうした理由がある。
「R-Carスタータキット」、オープンソースに対応させた狙い
EE Times 車載ソフトウェア環境である「R-Carスタータキット」に関しては、どんな戦略を講じていますか。
鈴木氏 ソフトウェア開発会社での同プラットフォームの採用を拡大したいと考えている。R-Carスタータキットは、車載Linux環境の開発を簡略化できるように設計している。
EE Times ソフトウェア開発会社がR-Carスタータキットを導入する目的は何ですか。
鈴木氏 画像認識やヒューマンマシンインタフェース(HMI)などのソフトウェアを開発するためだ。
EE Times R-Carスタータキットを「Automotive Grade Linux(AGL)」や「GENIVI」などオープンソースプラットフォームに対応させた狙いは何ですか。
鈴木氏 自動車メーカー各社は自社製品向けのソフトウェアアプリケーションを必要としていて、たくさんの見積依頼や提案依頼が飛び交っている。だが、残念なことに、こうしたソフトウェアコードは再利用されることがほとんどない。各社が独自のプラットフォームで、独自のソフトウェア開発を行っているためだ。AGLのようなオープンソースコードであれば、ソフトウェアコードを断片化させずに、相互に移植できるようにできると考えた。
EE Times GENIVIとAGLの違いは。
鈴木氏 非営利団体であるGENIVIは、業界からの要望をまとめ上げて、IVI(車載インフォテインメント)やコネクテッドカー向けの機能などを開発する。こうした成果物を組み合わせて策定した仕様は、ソフトウェアメーカーがアプリケーション開発の際に適用する標準規格となっている。
一方AGLは、車載用途向けにオープンソースのソフトウェアソリューションを開発するための、Linux Foundationのプロジェクトだ。AGLが開発したソフトウェアコードは、メンバー企業の間で共有されている。
当社のR-Carスターターキットは、Linuxに完全対応したカーネルを使用しているため、偏差や修正、分岐などが生じることはない。
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