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産総研、電流ノイズからReRAMの挙動を解明不揮発性メモリの用途拡大へ(1/2 ページ)

産業技術総合研究所(産総研)の馮ウェイ研究員らは、幅広い電流レンジでノイズを計測する手法を開発。この技術を用いて抵抗変化メモリ(ReRAM)が極めて小さい消費電力で動作する時の挙動を解明した。環境発電や人工知能デバイスなどに対する不揮発性メモリの用途拡大が期待される。

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酸素欠損を精密に制御、さらなる低消費電力を可能に

 産業技術総合研究所(産総研)ナノエレクトロニクス研究部門3D集積システム研究グループの馮ウェイ研究員らは2017年1月、幅広い電流レンジでノイズを計測する手法を開発するとともに、この技術を用いて抵抗変化メモリ(ReRAM)が極めて小さな消費電力で動作する時の挙動を解明したと発表した。

 今回の研究は、馮氏及び産総研エマージングデバイス研究グループの島久主任研究員らと、筑波大学数理物質系物理工学域の大毛利健治准教授が共同で行った。

 ReRAMは、消費電力が小さい不揮発性メモリであり、IoT(モノのインターネット)社会の実現に不可欠な技術の1つとみられている。この用途を拡大するためには、メモリ素子のさらなる高集積化(微細化)と低消費電力化などが課題とされている。産総研はReRAMに関して、電圧で駆動する不揮発性ゼロカレントメモリ技術の研究開発などを行ってきた。一方、筑波大学はトランジスタにおけるノイズ特性を広帯域で計測する技術を開発している。今回は、このノイズの計測技術をReRAM素子の評価に適用した。

 研究チームは今回、新たな構造のReRAM素子を作製した。二酸化ケイ素(SiO2)と窒化チタン(TiN)を積層させた微小な電極を形成し、ハフニウム酸化物(HfOx)やチタン(Ti)、TiNなどを積層する構造となっている。


作製したReRAM素子の構造イメージ。実際の電極は積層構造だが、この図では簡略化して表示 出典:産総研

 今回開発した加工プロセス技術を用いると、TiNの膜厚方向が電極の長さの一辺となり、電極面積や素子サイズの極微細化を容易に実現することができる。しかも、膜厚は成膜時間を適切に制御することで、厚みを10 nm以下にすることも可能である。今回のプロセス技術は、シリコン基板に対しメモリ素子を垂直積層する3次元集積技術にも有用だという。

 作製したReRAMの特長の1つは、同じ素子構造でありながら、フィラメント状に電流が流れることによって低抵抗状態となる動作モード(フィラメントモード)と、金属/酸化物界面全体で抵抗変化が生じる動作モード(界面モード)の、異なる2つのモードで動作できるという。また、動作電流は従来のReRAM素子と同様に100μAで動作するだけでなく、従来に比べ3桁も小さい100nA以下で動作することを確認した。

 研究チームは、メモリ素子中を流れる電流分布を可視化するため、電子ビーム吸収電流(EBAC)測定と電流ノイズ測定を行った。これらの測定は非破壊で行うことが可能なため、異なる条件で測定する場合でも、同一試料で行いその測定結果を容易に比較することができるという。

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