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産総研、電流ノイズからReRAMの挙動を解明:不揮発性メモリの用途拡大へ(2/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)の馮ウェイ研究員らは、幅広い電流レンジでノイズを計測する手法を開発。この技術を用いて抵抗変化メモリ(ReRAM)が極めて小さい消費電力で動作する時の挙動を解明した。環境発電や人工知能デバイスなどに対する不揮発性メモリの用途拡大が期待される。
低消費電力動作と従来動作で比較
EBAC測定の結果を低消費電力動作と従来動作で比較した。従来動作では、EBAC像に輝点が現れた。これにより局所的な電流経路が形成された状態になっていることを確認した(フィラメントモード)。低消費電力動作では、メモリ素子部におけるEBAC像のコントラストがほぼ均一となった。このことは電流がメモリ素子全体を流れている状態であることが分かった(界面モード)。
また、従来動作と低消費電力動作における低抵抗状態、高抵抗状態について、それぞれ電流ノイズを計測した。なお、ノイズ測定では電流を1kHzから1MHzで高速サンプリングし、時間領域と周波数領域の両方で解析した。
これらの結果により、ノイズの発生源となる電子捕獲、放出が少ないと、周波数の2乗に対して強度が逆比例する「1/f2ノイズ」が現れることが分かった。逆に、電子捕獲、放出が増えると、1/f2ノイズは「1/fノイズ」に変わった。低消費電力動作時の高抵抗状態では、ノイズに寄与する酸素欠損の数が限られるために、1/f2ノイズが支配的になることが明らかとなった。このことから、抵抗変化メモリのさらなる低消費電力化を実現するには、電気伝導に寄与する酸素欠損の削減が必須となることが分かった。
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