“熱流”を手軽に計測できるロガー――日置電機:温度では見えない世界が見える(1/3 ページ)
日置電機は、熱エネルギーの移動を検知する熱流センサーを使用したデータロガーの提案を拡大させている。熱流センサー部をフレキシブルで小型化するとともに、センサー部とロガー部をワイヤレス接続化するなど多数の工夫を盛り込むことで、従来、建材や住宅用途に限られていた熱流計測の応用範囲を自動車や電子機器設計現場などへ広げ、熱流ロガービジネスを拡大させているという。
温度では分からない熱の流れが測定できるーー
日置電機が2014年から展開している「熱流ロガー」の引き合いが増えているという。デンソーが開発した薄くてフレキシブルな高感度熱流センサーを採用した熱流ロガーを製品化。それまでは住宅や建材用途に限られていた熱流計測の応用の幅を広げ、今では自動車や電子機器の開発現場をはじめ、衣料品開発、農業などで熱流ロガーによる熱流計測が行われているとする。
熱流(熱流束)とは、その名の通り“熱の流れ”。単位面積、単位時間当たりに移動する熱エネルギーのことを指す。一般的に、熱流は「W/m2」で表される。
この熱流を検知できると、“温度”だけでは分からない“熱”に関するさまざまな情報を把握できる。
例えば、温冷感覚の違いを定量的に知ることができる。冬場に屋外に置いてある金属板に素手で触れるととても冷たく感じるが、同じ場所に置いてある木板は金属板ほど冷たく感じない。こうした温冷感覚の違いは、温度の違いではなく、熱流の違いで生じる。熱伝導率の高い金属板に、手の熱を多く奪われる(=手から金属板に熱が大きく移動する)ため“冷たく感じる”のだ。
センサーが堅く、大きく、用途限られた
熱流センサーは、こうした熱エネルギーの移動量を検知できるセンサーであり、少なくとも数十年前から存在する。これまでの熱流センサーは、エポキシガラス板を挟み込む形で、銅とニッケル合金による小さな熱電対を多数形成、直列接続し、エポキシガラス板両面の温度差から生じる熱起電力(電位差)で熱流を検出する。この時、電圧の正負で、熱が板状の熱流センサーの裏から表に流れているのか、表から裏へ流れているのか、熱流の向きも分かる仕組みだ。
エポキシガラス板を使った従来熱流センサーは、建材や住宅の断熱性評価に広く使われ、日置電機も2014年に従来熱流センサーとデータロガーを組み合わせた「熱流ロガー」として製品化し販売を始めた。
熱流ロガーを企画、開発を担当した日置電機プロダクトマーケティング部の久保田洋志氏は、「おじいちゃん、おばあちゃんが家屋内で熱中症に倒れたり、子どもが真夏の車内に置き去りにされ亡くなってしまったり、といった悲しい事件、事故も、もっと熱流が理解され、断熱性や放熱性が改善されれば減るかもしれないと思ったことが、製品化のきっかけ」と振り返る。
ただ従来熱流センサーは、大きい上に、堅く曲がらず、自動車部品や電子部品の熱流測定用途では使い勝手が悪かった。
小型、フレキシブルな半導体式センサー
そうした中で、日置電機では、デンソーが開発した半導体式熱流センサー(関連記事)を使用した熱流ロガー「LR8416」「LR8432」などを製品化する。半導体式熱流センサーは、熱電変換材料に半導体を用いたもので、デンソーでは半導体を高密度実装する技術を用い、小型で薄型のフレキシブル基板上で高感度の熱流センサーを実現。現状、厚さ0.28mmで、最小9.1×10mmの熱流センサーを製品化している(他に、31.6×10mm品、54.1×10mmもある)。
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