半導体業界のM&A、2017年は収束へ向かうのか:過去2年に比べれば落ち着く?
2017年は、過去3年にわたる前例のない半導体業界再編の波が、ついに収束に向かう可能性があるという。本当だろうか。
M&A関連のニュースはいったん途切れたが……
2017年1月に入ると、大規模な企業統合に関する報道や発表がいったん途切れたが、それはM&Aの嵐が再び始まる前の静けさにすぎないのかもしれない。業界や市場では目下、東芝の半導体事業をめぐる臆測が渦巻いている。東芝が同事業のスピンオフを検討していることが報じられたからだ。
IC Insightsの市場調査部門で主席アナリストを務めるRob Lineback氏は、EE Timesとのインタビューの中で、「現段階では、買収の波がやんだとは断言できない。海の波と同じで寄せては返す、ということを繰り返す可能性もある」と述べた。
IHS Markitの組み込みプロセッサ部門の主席アナリストであるTom Hackenberg氏も、買収の嵐はまだ終わっていないことを確信している。同氏はEE Timesに「今後も業界再編が続くのは明らかだ」と語った。
一方で、2016年にM&Aの動きがわずかながら落ち着いていたことを示すデータもある。とはいえ、歴史的な尺度でみると2016年がM&Aの“当たり年”だったのは間違いない。
市場調査会社のIC Insightsによると、2016年に発表された半導体業界のM&Aの総額はおよそ985億米ドルで、最高記録となった2015年の1033億米ドルを下回った。2015年と2016年の買収総額を合わせると、過去5年間に半導体業界で行われたM&Aの平均年間総額(128億米ドル)の約8倍となる。
Lineback氏は、「2017年はM&Aという点では2016年と同様に縮小する」と見込んでいる。2016年上半期に発表されたM&Aの総額が、45億米ドルという比較的少ない規模にとどまったのは、2015年に発表された買収取引を“消化する”時期だったためだ。2016年下半期になるとM&Aの波は再び高まり、Qualcommが390億米ドルでNXP Semiconductorsを、ソフトバンクが320億米ドルでARMを買収すると発表。その結果、下半期の買収総額は940億米ドルに達したのである。
アナログ半導体業界には注視が必要か
Lineback氏は、ここ数カ月で株式市場が持ち直していることと、半導体企業の買収コストが1年前や2年前に比べて著しく上昇していることに言及した。
Lineback氏に「買収の対象として魅力的な企業はどこか」と尋ねると、複数の企業を挙げた。いずれも2016年にM&Aのターゲットとうわさされたところだ。その中には、アナログ/ミックスドシグナルICベンダーのMaxim Integrated Productsの他、Xilinx、Cavium、Apple「iPhone」のサプライヤーであるSkyworks Solutionsが含まれていた。同氏は、「TIのように、M&Aについてまだ目立った行動をしていない大企業が今後どう動くのか。それが注目されている」と続けた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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