2016年半導体業界再編を振り返る:2015年に続いて、やまぬM&Aの嵐(1/6 ページ)
2016年も、半導体業界の“M&Aの嵐”がやむことはなかった――。2016年年末企画として、ことし1年間に半導体業界で繰り広げられた買収劇(16件)を振り返っていく。
2015年に続き買収総額は1000億米ドル超え
結局、2016年も、半導体業界は“M&Aの嵐”がやむことはなかった――。
昨年、2015年は、買収額が100億米ドルを超える“巨大買収劇”が4件も合意に至り、半導体史上最も再編の嵐が吹き荒れた年だった。そして迎えた2016年、M&Aの嵐は2015年ほど吹き荒れないかと思われたが、終わってみれば、100億米ドル超えの買収劇が3件に及んだ上、2015年にもなかった買収額5兆円クラスの過去最大の買収劇も生まれるなど、M&Aの嵐は全く収まることはなかった。
そこで、2016年1年間に合意、発表された買収劇を中心に、時系列で振り返る。
1〜3月
MicrochipがAtmelを買収=買収額35.6億米ドル
マイコンを主力とするMicrochip Technology(マイクロチップ)が、同じくマイコンが主力のAtmel(アトメル)を買収することで“決着”した。
Atmelを巡っては、2015年9月に、Dialog Semiconductor(ダイアログ)が46億米ドル相当で買収することで合意。しかし、合意後、Dialogの株価が下落したことで買収対価が大きく目減りする事態となった。
そこで、Microchipが買収額35.6億米ドルで対抗買収案をAtmelに提示。Atmel側は、Dialogとの合意を1億3730万米ドルの違約金を払って破棄し、2016年1月19日(米国時間)にMicrochipに買収されることで合意し、発表した。
その後、2016年4月に買収が完了。ルネサス エレクトロニクス、NXP Semiconductorsに次ぐ業界3位のマイコンメーカーが誕生するに至った。しかし、複雑な経過をたどった買収劇を物語るかのように、買収完了直後から元Atmelの従業員と退職金や退職条件をめぐる問題が発生し、混乱が生じた。なお、Microchipは、2016年10月に社長兼最高執行責任者のGanesh Moorthy氏の声明として、Atmel買収後の製品戦略を公表している。
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新生Broadcom発足=史上最高額(当時、370億米ドル)の買収が完了
2015年5月に合意し、半導体史上最高(当時)の買収額370億米ドルで大きな話題を呼んだAvago TechnologiesによるBroadcomの買収がほぼ予定通りに2016年2月に完了した。年間売り上げ規模約85億米ドルのBroadcomを、同56億米ドルのAvagoが飲み込むという珍しい買収劇で、買収後Avagoは、社名を“Broadcom”に変更。日本円にして売上高1兆円を超える巨大な半導体メーカーが誕生した。
ただ、買収完了後、直ちに新生Broadcomは、事業構成の見直し、再編に着手し、旧Broadcomの事業の一部を整理することを示唆した。
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トレックスがフェニテックを子会社化=取引額約20億円
日本のファブレス半導体メーカーであるトレックス・セミコンダクターが、同じく日本のファウンドリーであるフェニテックセミコンダクターの株式約51%を取得し子会社すると2016年3月に発表し、同年4月に完了させた。株式取得額は約20億円。
トレックスは、ファブレスのビジネスモデルをとりながら、電源ICを中心にしたアナログ半導体専業メーカーとして事業を展開。長くモバイル機器向けが主力だったが、近年は自動車、産業機器向け市場に参入し、米国など海外のアナログ半導体メーカーと競合するケースが増えていた。
そうした中で、トレックスは、自社工場を持つIDM(垂直統合型半導体メーカー)が多い競合の海外アナログ半導体メーカーへの対抗策として、製造パートナーの1社だったフェニテックをグループ内に取り込むことを決定。ファブレスの柔軟性を維持しながらも、フェニテックの製造ラインを活用して、車載や産業機器向けに対して高品質の製品を長期安定供給できる体制を目指す。
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