GFが中国に工場建設、痛手を負うのは?:成都に100億ドル規模を投資(1/2 ページ)
GLOBALFOUNDRIES(GF)が中国の成都に工場を建設する。巨額の資金を投じて半導体産業の強化を進める中国にとって、これは朗報だろう。では、痛手を被る可能性があるのは誰なのか。
GFが中国に工場建設
GLOBALFOUNDRIESが2017年2月9日(米国時間)に、中国・四川省の成都に100億米ドル規模の工場を建設する計画を発表した。中国は近年、国内に完全な半導体エコシステムを構築すべく積極的な取り組みを進めているため、今回のニュースは業界観測筋にとって、特に驚くようなものではなかった。
米国の市場調査会社IC InsightsのプレジデントであるBill McClean氏は、筆者の同僚であるRick Merritt氏のインタビューに応じ、「GLOBALFOUNDRIESは、TSMCやUMC、SMICが中国国内でファウンドリーの製造能力を拡大していることを受け、同じように動く必要があると確信したのだろう」と述べている。
今回のGLOBALFOUNDRIESの動きから、中国では今や、半導体製造能力をめぐる競争の激化が避けられないものになったことがよく分かる。
もちろん、どのようなビジネスおよび技術分野でも、重要な発表が行われると、必ず他の企業や技術に巻き添え被害が及ぶ一方で、メリットが提供される場合もある。
ここで浮かんでくるのが、「GLOBALFOUNDRIESの今回の発表により、利益を得るのはどの企業なのか」「中国全体に工場建設の波が押し寄せる中、長期的に形勢が不利になっていくのはどの企業なのか」といった疑問ではないだろうか。
中国のFD-SOI
まずは、利益を得るとみられる勝者について取り上げていきたい。
確実に大勝利を収めるのは、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ)技術を推進してきた企業だ。低消費電力のモバイルデバイスに向けた代替プロセス技術として、FD-SOIを推奨してきた取り組みの成果が、ついに中国で実を結ぶことになるだろう。
これまでにも、中国とFD-SOIとのつながりを示す明確な兆候がいくつかみられたが、自ら進んでFD-SOIで賭けに出る中国ファウンドリーが現れるのかどうかは、全く分からなかった。世界全体が、気をもみながら次の動きを待っていたのだ。
そして今回、GLOBALFOUNDRIESが成都における新工場建設を発表したことで、その答えが明らかになった。
GLOBALFOUNDRIESは2017年2月9日の発表の中で、「今後約1年の間は、当社のシンガポール工場から移管したプロセス技術を適用して、180/130nmチップを製造する。その後、2019年に始動予定の第2段階から、ドイツ・ドレスデン工場の技術を適用し、22nm FD-SOIチップの製造を専業としていく予定だ」と明言している。
今回の成都工場の他にも、中国が密かにFD-SOI開発に注力し始めていたことを示すデータが幾つかある。
(1)中国・上海に拠点を置くSimguiは2015年秋に、Soitecの「Smart Cut」技術を適用して、同社にとって初となる200mm SOIウエハーの製造を開始した。Soitecはフランスの企業で、半導体材料の開発、製造を手掛ける。同社は2014年に、Simguiとの間でパートナー契約を締結し、ライセンスおよび技術の移管に合意している。Simguiは、Smart Cut技術を使って200mm SOIウエハーを製造することが可能になった。
(2)中国のNSIG(National Silicon Industry Group)は2016年3月に、Soitec株式の14.5%を取得した。NSIGについては、中国のIC開発向け政府資金「National IC Industry Investment Fund(Big Fund)」と混同しがちだが、Big Fundが2016年初めに設立した投資プラットフォームである。NSIGの使命は、半導体材料ビジネスとそのエコシステムを構築し、「More than Moore(モアザンムーア)」の実現に向けて注力していくことにある。
(3)中国のファウンドリーであるHLMC(Shanghai Huali Microelectronics Corporation)の経営幹部は、SEMIが米国で開催した年次イベント「Industry Strategy Symposium(ISS)」(2017年1月8〜11日)に出席した時、披露したスライドの中で、HLMCが59億米ドルを投じて建設予定の製造工場「Fab 2」において、FD-SOIが不可欠な技術になることを明示してみせた。
Soitecの広報担当者は、EE Timesの取材に対し、「GLOBALFOUNDRIESが成都工場への投資を発表したことで、モビリティー市場における当社の戦略が確かなものとなった。これはつまり、既存のRF-SOIと同様に、FD-SOIが業界標準になりつつあるということだけでなく、中国におけるSoitecの戦略の正当性が示されたということだ。GLOBALFOUNDRIESの成都工場建設は、中国で拡大の一途にあるファブレス半導体業界にとって、非常に重要な後押しとなるだろう」と述べている。
つまりFD-SOIが、中国の半導体ロードマップの一部として正式に組み込まれたということだ。
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