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ナノ酸化鉄、100GHz以上のミリ波も吸収nano tech 2017

東京大学、DOWAエレクトロニクス及び岩谷産業は、「nano tech 2017」で、高性能ハードフェライト磁石「イプシロン型ナノ酸化鉄」を参考展示した。

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粒径10nm以下のフェライト磁石、IoT社会を支える

 東京大学、DOWAエレクトロニクス及び岩谷産業は、「nano tech 2017」(2017年2月15〜17日、東京ビッグサイト)で、高性能ハードフェライト磁石「イプシロン型ナノ酸化鉄(ε-Fe2O3)」を参考展示した。

 ε-Fe2O3は、粒径を10nm以下まで小さくできるフェライト磁石で、東京大学大学院理学系研究科化学専攻の大越慎一教授が2004年に合成に成功した。対称性が破れた結晶構造を持つため、強磁性であり強誘電性という大きな特長を有する。このため、大容量の磁気テープ材料や、100GHzを超えるミリ波の吸収材といった用途での応用が期待されている。

 今回、大越教授の研究成果を受けて、DOWAエレクトロニクスがナノ酸化鉄の量産化を、岩谷産業がマーケティングおよび販売を、それぞれ担当することがきまり、本格的に用途開拓を行うこととした。ε-Fe2O3のサンプル品は粉末や塗料で供給される。この材料を用いて開発された日立マクセルや東京応化工業のミリ波帯電磁波吸収シートの試作品も、会場内で展示された。


ε-Fe2O3磁性粉が入った容器。Al置換タイプやGa置換タイプを用意した

 ε-Fe2O3の応用分野として、ブースでは大きく2つの事例を紹介した。1つはミリ波帯を用いた車載レーダーシステムにおける吸収材としての応用である。ミリ波帯は、車載レーダーの他、次世代の無線通信や放送、基板内通信などへの応用が拡大している。このため、システムの信頼性向上やセキュリティ確保のために、不要な電波を吸収する必要がある。

 これまで、100GHzを超える周波数を吸収できる磁性材料はなかったという。これに対してε-Fe2O3は、182GHzのミリ波を吸収することができる。さらに、3価のFeイオンをAlやGaなど他の3価金属イオンに置換することで、吸収できる周波数帯は、35〜222GHzに広がるという。

 薄型の吸収シートを作製できるのも大きな特長だ。一例だが、東京応化工業が開発品として自社ブースで紹介した電磁波吸収体は、吸収体膜厚がわずか200μmと記されている。「既存のカーボンを用いた電磁波吸収体ではミリ単位の厚みになっていた」(説明員)と話す。

 もう1つの応用例が次世代の磁気テープである。ε-Fe2O3の保持力は、粒径が8.2nm時で5.2kOeを達成している。この数値はネオジム磁石やバリウムフェライトの保持力を上回るという。しかも、粒径がそろっており、テープへの塗布も高密度かつ均一に行うことができる。IoT社会の実現に向けては、大容量のデータを記録、保存できる磁気テープが注目されている。ε-Fe2O3は、次世代の磁気テープ材料として期待される。

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