検索
ニュース

産業廃棄物をリチウムイオン電池材にリサイクルSi切粉を負極材に変える新技術(1/2 ページ)

東北大学と大阪大学の研究グループは、産業廃棄物となっていたシリコン(Si)切粉を、高性能なリチウムイオン電池負極材料に変えることができるリサイクル方法を開発した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

簡便なプロセスで大量生産が可能に

 東北大学多元物質科学研究所の西原洋知准教授と京谷隆教授、大阪大学産業科学研究所の松本健俊准教授と小林光教授らの研究グループは2017年2月、産業廃棄物となるシリコン(Si)切粉を、高性能なリチウムイオン電池負極材料に変えることができるリサイクル方法を開発したと発表した。

 リチウムイオン電池は、充電時に負極へリチウムがたまり、放電時は負極にたまったリチウムが正極に移動することで外部回路に電気が流れる。一般的に正極材料はリチウム遷移金属酸化物、負極材料は黒鉛を用いることが多いという。リチウムを蓄える容量の大きい電極材料を採用すれば、小型軽量の電池でもより多くの電力を蓄えることが可能となる。

 こうした中で、新たな負極材料として注目されているのがSiだ。従来の黒鉛は、リチウムをため込む能力が最大372mAh/gだが、Siはその数倍も高い。しかも、資源としても豊富だ。ICや太陽電池用に大量生産されるシリコンウエハーは、加工時に年間約9万トンの切りくず(Si切粉)が発生するといわれている。現在は産業廃棄物として処理されているこのSi切粉を、負極材料として有効に活用することができれば資源の無駄を省くことができる。一方で、Siは充電時に体積が4倍程度まで膨張し、電池の内部構造を破壊してしまうという大きな課題もある。


シリコンウエハーの製造プロセスイメージ 出典:東北大学、大阪大学

 Siを用いた負荷電極の劣化を防止する方法としてはいくつかある。例えばSiの周囲に空間を配置して、その空間内でSiを膨張/収縮するような構造とする方法。もう1つは充放電中にSiを自発的に劣化しにくい構造(シワ状構造)に変化させる方法である。いずれも製造コストが高くなり、実用化に向けて課題となっていた。


Si負極材料の劣化を防ぐ方法その1 出典:東北大学、大阪大学

Si負極材料の劣化を防ぐ方法その2 出典:東北大学、大阪大学

 そこで研究グループは、高純度のSi単結晶インゴッドを切断する時に発生するSi切粉に着目した。大阪大学の小林教授らによる研究グループはすでに、Si切粉を高純度Siナノ粒子にリサイクルする手法を開発していた。また、東北大学の京谷教授らによる研究グループは、Si負極材料の開発に関する検討をこれまで行ってきた。そこで両者は、安価なSi切粉を用いて、高性能なSi負極材料を調製するために共同研究を行った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る