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緑色蛍光体を開発、8K放送のきれいな色を再現NIMSとシャープが開発(1/2 ページ)

物質・材料研究機構(NIMS)とシャープの研究チームは、色域を拡大する緑色蛍光体を開発した。この蛍光体を用いて白色LEDを試作したところ、8K放送に対応できる色再現域を達成できることが分かった。

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ピーク波長が525nmの純粋な緑色光に変換

 物質・材料研究機構(NIMS)機能性材料研究拠点の広崎尚登フェローおよび、シャープ研究開発事業本部の和泉真室長と吉村健一研究員からなる研究チームは2017年2月、色域を拡大する緑色蛍光体を開発したと発表した。この蛍光体を用いて白色LEDを試作したところ、8K放送が目標とする色範囲規格(BT.2020規格)の90%を達成できたという。

 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、8Kテレビの開発が進められている。8Kテレビは7680×4320ピクセルという高い解像度に加え、色の表現範囲も広がる。新たに策定されたBT.2020規格では、自然界に存在しない色まで表現範囲に含まれており、これを再現できるディスプレイはまだ存在していないという。

 液晶バックライト用のLED光源としては現在、NIMSが開発したβサイアロン緑色蛍光体やカズン赤色蛍光体を用いた白色LEDなどが利用されているという。この白色LEDは、現行の色範囲規格(BT.709規格)に対応できるものの、BT.2020規格に対応するにはLEDの色域をさらに拡大する必要があった。

 研究グループは今回、NIMSが2008年に発見した材料である「マンガン(Mn)添加γAlON緑色蛍光体」を用いた。γAlONは、アルミニウムと酸素および窒素を主成分としたセラミックスである。NIMSは、γAlON結晶にマグネシウム(Mg)とMnを添加し組成を調整したところ、LED用緑色蛍光体になることを見出した。この材料は、窒化アルミニウムや酸化アルミニウム、フッ化マグネシウムおよびフッ化マンガンを、窒化ホウ素製のるつぼに入れ、5気圧の窒素雰囲気中、1800℃で反応させて製造した。組成と製造プロセスの最適化を行うことで、発光効率を高めることができたという。

 開発したγAlON蛍光体は、青色LEDの光をピーク波長が525nmの純粋な緑色光に変換することができるという。これまで用いてきたβサイアロン緑色蛍光体のピーク波長は540nmであり、γAlON蛍光体に比べるとやや黄色がかった緑色となっていた。


開発したγAlON蛍光体と、従来のβサイアロン蛍光体による発光スペクトルの比較 出典:NIMS

 シャープの協力を得て、γAlON蛍光体を用いた白色LEDを試作した。赤色蛍光体にはスペクトル幅が狭いKSF13蛍光体を用いている。開発した白色LEDバックライトは、従来品に比べて赤、緑、青色の各ピークが鋭く立ち、三原色の色分離性にも優れ、高い色純度を実現できることが分かった。


白色LEDバックライトの発光スペクトル。左が開発品、右が従来品 出典:NIMS

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