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0.4mmフィルムを組み込むIoTマットレスの挑戦IoTデバイスの開発秘話(6)(2/3 ページ)

睡眠の質を向上するIoTマットレス「MOORING」が登場した。睡眠は人生の3分の1、約26年間もの時間を占めているという。MOORINGは、組み込んだPP電圧フィルムから身体反応を取得し、人工知能も活用することで、万人に共通する睡眠の質改善として有効な“温度”を調節する。

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温度調節だけではないさまざまな機能


松本華澄氏

 MOORINGが提供する機能は、温度調節だけでない。男女や大人と子どもによって適温は大きく異なるため、ダブルサイズの製品では左右の温度を個別に調節してくれる。

 頭部近くに設置したバイブレーションによる目覚まし機能もある。一般的な目覚まし機能だけでなく、温度調節を通じて利用者を浅い睡眠に誘導し、最もふさわしいタイミングで起こす「スマートアラーム」機能があるのは、MOORINGならではの特長である。


 専用アプリからは、いつでも睡眠の質と健康状態を確認すること可能だ。松本氏は「離れて暮らす両親や子どもの心拍数を把握できるため、より精度が上がれば、見守り用途としても活用できる。MOORINGは、さまざまな可能性を秘めている」と語る。

 個人的に良いなと思ったのは、乾燥機能である。全出力で65℃前後まで温度が上昇するため、細菌やダニなどの害虫抑制に効果がある。PP電圧フィルムは防水だが、コネクターとコントローラーは防水対応になっていない。洗濯は難しいため、汚れが気になる場合はぬれたタオルやブラシで汚れをとり、乾燥機能を利用することを推奨している。


安全面も考慮した設計となっている (クリックで拡大) 出典:ELESTYLE

 電源電圧は直流19Vで、AC-DCアダプターを介してコンセントにつなぐ。温度監視機能も搭載しており、異常な温度上昇があった場合は自動で切断する。これにより、電熱線回路が切れてしまったり、漏電や火災が発生したりなどの危険性をなくしている。

温度調節は万人に重要な要素

 MOORINGが生まれたきっかけは、MIRAHOMEのCEOであるAlice Fu氏の経験によるものだ。Alice氏が英オックスフォード大学で科学分野の博士号を取得している期間、膨大な勉強量と論文の執筆に追われ、十分な睡眠時間を確保できなかった。中国とイギリスの往復による時差のストレスも重なり、卒業後も睡眠の質が改善されなかったという。

 Alice氏が「どうにかしたい」と思い友人に相談してみると、友人も同じように睡眠で悩んでいることが分かった。「睡眠で悩んでいる人は世界に多くいるのではないか」と思ったAlice氏は、睡眠に関する調査を始めたそうだ。調査によって睡眠障害を抱える人は世界中にいることが分かったが、性別や年齢、気候条件によって原因が違う。しかし、万人に共通する睡眠の質改善として、温度が重要な要素になることが分かった。


「MOORING」のこれまで (クリックで拡大) 出典:ELESTYLE

 そこでAlice氏は2015年にMIRAHOMEを設立し、複数のメンバーとMOORINGの開発を始めた。2016年4月、米国のクラウドファンディングサイト「INDEIEGOGO」で約26万米ドルの資金調達に成功。ELESTYLEの社員が、MIRAHOMEのデザイナーと友人だったことから、日本向け製品の共同開発や市場開拓をELESTYLEが担うこととなった。

 米国での資金調達後、MOORINGのデモ機が2016年9月に完成。2016年10月からは、日本でクラウドファンディングを行い、約900万円の資金調達に成功している。現在は公式販売サイトと、ECサイト「RAKUNEW」から購入することができる。シングルサイズは5万1800円(税込)、ダブルサイズは5万6800円(税込)となっている。

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