5Gでビジネスモデルの転換を図る通信事業者:MWC 2017ではSDNやNFVに注目(1/2 ページ)
スペイン・バルセロナで開催中の「MWC 2017」では、スマートフォンなどの端末から、SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)やNFV(ネットワーク仮想化)に話題の中心が移りそうだ。背景には、通信事業者がビジネスモデルの見直しを進めているという現状がある。
端末が中心だったMWC
「Mobile World Congress(MWC)」はこれまで、技術メーカーにとって、新型スマートフォンや通信チップ、データ利用量の増大に対応する新しいアプリ、主要なビルディングブロックなどを発表し、モバイル通信事業者たちが無線通信インフラをアップグレードできるようサポートを提供する、重要な展示会として位置付けられてきた。
このような傾向は、現在も一部で継続している。しかし今や、自社製品を披露すべくMWCに参加する企業の顔触れが、実に幅広くなってきた。スペイン・バルセロナで2017年2月27日〜3月2日に開催中の「MWC 2017」には、データ処理/分析メーカーや、自動車メーカーの他、スマートシティーやVR(仮想現実)/AR(拡張現実)の開発を手掛ける技術メーカーなどが参加する。つまり、台頭する5G(第5世代移動通信)エコシステムの中で役割を確保したいと考える全てのメーカーが、一獲千金を狙ってバルセロナに集結しているということだ。
通信サービスプロバイダーは現在も、MWCの重要な来場者である。しかし、こうしたプロバイダーにとって、MWC 2017は、通常通りのビジネスとは程遠いものになりそうだ。
ビジネスモデルの見直しを図る通信事業者
ここで、現実に向き合ってみよう。かつては大半の通信事業者(キャリア)にとって、加入者契約の数が成功の判断基準とされ、1回線あたりの月間売上高であるARPU(Average Revenue Per Unit)をいかに迅速に成長させるかが戦略の全てだった。しかしこのような時代は、はるか昔に過ぎ去っている。
キャリア各社が現在、自らのビジネスモデルの見直しを進めている背景には、「スマートフォン市場の成熟」「IoT(モノのインターネット)」「5G」の3つの要因が挙げられる。
米国の市場調査会社であるIHS MarkitでM2M(Machine to Machine)/IoT担当シニア主席アナリストを務めるSam Lucero氏は、EE Timesの取材に応じ、「加入者市場が飽和状態に近づく中、モバイルエコシステムでは全般的に、IoTを重要な成長のチャンスと認識して、採用を進めてきた。また、新しい狭帯域無線技術によって、『NB(Narrow Band)-IoT』などIoT向け規格が開発されたことから、モバイルエコシステムのプレイヤー企業は今後、IoTから利益を得られるようになるだろう」と述べている。
IoT市場への移行は、論理的な段階を踏まえて進められているように見えるが、モバイル通信事業者にとっては、決してシンプルな方法で簡単に実行できることではない。通信事業者はこれまで、人間の加入者を対象とした取り組みに注力してきた。顧客のニーズに合わせたサービスを提供することで、成長を遂げてきたのだ。
IoT時代の“顧客”
一方、IoT時代には、キャリアの顧客は、もはや人間だけではない。組織化されたエコシステムの中で、機械や自動車、センサー、ホットスポットなどの「モノ」がネットワークを使用するという状況に対処しなければならない。多数のデバイスや複数の垂直的な産業において提供されるコネクティビティは、主要な要素の1つとなるだろう。
つまりARPUは、もはや適した指標にはならないということだ。
Accentureのメディア/通信部門でグローバルインダストリー担当マネージングディレクターを務めるFrancesco Venturini氏は、最近行われたEE Timesの電話インタビューの中で、「MWC 2017に参加するキャリアは、必ずしも、自社の事業を後押しするための新しい技術を探し求める必要はない(例えば、データ容量を増加させるためなど)。モバイル業界の傾向を見いだし、理解するために新技術を求めていくべきだ」と述べている。
キャリアは現在、板挟みになっている。Venturini氏の見解によれば。彼らのビジネスモデルを再考する必要に迫られているという。
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