積み木のように機能を拡張する、IoTゲートウェイ:Wi-SUN対応品を発表(2/2 ページ)
台湾スタートアップのNextDriveは、IoTゲートウェイのWi-SUN対応モデルの販売を2017年4月から開始する。本体をコンセントに差し込むだけで設置が可能で、スマートフォンから誰でも容易に扱うことが可能という。積み木のように機能を拡張できる点が特長だ。
なぜ、Wi-SUNなのか
Wi-SUNは、情報通信研究機構(NICT)が中心的な役割を果たし国際標準化したため、日本としても普及に期待が掛かる。超低消費電力が求められるIoTを実現する用途としての活用が考えられるが、京セラコミュニケーションシステムが国内で提供を開始したIoTネットワーク「SIGFOX」など、現在さまざまな無線規格が乱立している状況だ。
なぜ、NextDriveはWi-SUNを採用したのだろうか。石氏は「電力自由化によって生まれる大きな市場」を挙げる。第15回スマートメーター制度検討会資料(2014年9月時点)によると、国内におけるスマートメーターは2024年までに累計8000万台導入される。また各電力会社のBルート通信方式には、Wi-SUNが活用される見込みである*)。
*)石氏によると、台湾でもスマートメーターの通信規格としてWi-SUNが採用されたという。
このように電力自由化に伴う新たな市場は大きく、競争が激しくなることが予想される。各通信キャリアも電力事業に参入しているが、石氏は「HEMSを応用した付加価値サービスが差別化のカギになる」と語る。Wi-SUN Cubeが狙うのはHEMSの核となり、先ほど挙げたようなセキュリティや見守り用途などの付加価値サービスを生むことだ。
Wi-SUN Cubeの開発も、HEMSを応用したサービスを提供したい国内電力会社がゲートウェイを探していたときに、NextDrive Cubeに出会ったことがきっかけという。台湾でWi-SUNモジュールを製造しているロームも、社員がNextDrive Cubeのデザインと使いやすさに一目ぼれし、開発パートナーとして連携した。石氏は「ロームのWi-SUNモジュールは業界最小であり、市場シェアも高いことから採用を決めた」としている。
「Wi-SUNモジュールとして各電力会社へ提案を行ってきたが、完成品を持ってきてほしいという声が多かった。そこでNextDrive Cubeと出会い、開発パートナーとして、Wi-SUNモジュールの提供をさせてもらった。半導体や部品単体だけでなく、完成品やシステムありきで半導体、部品が売れる時代になったことが分かった」(ローム担当者)
LTE対応製品を今後提供予定
NextDriveは台湾に本社を置く、設立3年目のスタートアップ企業である。同社CEOの顔哲淵氏は、UMCグループでUSBコントローラーICの設計をしていたが、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、ワイヤレス技術を応用したIoT製品を開発したい思いから創業した。2015年10月の「第2回 Fukuoka Global Venture Awards」では、優秀賞を受賞。2016年11月の「ET/IoT Technologyアワード」では、ET展30回開催記念JASA特別賞を受賞するなど国内でも存在感を高めつつある。
2017年1月には東京都港区に日本拠点を設立したが、現在社員は石氏のみであるため、2017年中に約8人まで増員する予定。製品のAPI/SDKもパートナー向けに公開しており、新たな付加価値向上サービスの誕生を加速させる狙いだ。国内は開発パートナーのロームだけでなく、インターネットイニシアティブ(IIJ)やACCESSなどソフトウェア関連の企業も名を連ねている。今後もパートナーの募集は積極的に続けるという。
Wi-SUN Cubeは2017年4月に量産を開始し、電力会社や通信キャリアへ2017年中に20万個の提供を目指す。LTEに対応したNextDrive Cubeも今後提供する予定とした。
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