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64ビット4コアCPUが5ドル、中国メーカーの価格破壊製品分解で探るアジアの新トレンド(15)(2/3 ページ)

「PINE64」は、「ラズパイ3」同様、64ビットのシングルボード・コンピュータである。だが、価格はラズパイ3のおよそ半分。それにもかかわらず、搭載しているチップの性能は、ラズパイ3を上回るものもある。PINE64の分解から見えてきたのは、中国チップメーカーによるCPUの“価格破壊”であった。

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「A64」とは、どのようなチップなのか

 A64とはどのようなチップなのであろうか。図3は、毎年1月に米ラスベガスで開催される「CES」で、2015年に発表されたA64の資料である。64ビットOSが本格的に普及し始めたのは2014年からだ。Android OSではバージョン5.0以降が64ビット対応で、正式版は2014年後半にリリースされている。Allwinnerが「CES 2015」で「A64」という5米ドルのチップを発表したのは、なんと、そのわずか数カ月後であった。


図3:Allwinnerの「A64」は、5米ドルのプロセッサである(クリックで拡大)出典:テカナリエレポート

 ご存じの通り、半導体チップの価格はウエハーからの取れ数で決まる。単純計算になるが、A64の製造に直径30cmのウエハーを使った場合、2000個弱のチップが1枚のウエハーから取れることになる。ウエハー価格はプロセステクノロジーや量産数によって変動するが、A64が使う28nmでは数千米ドルである。仮に4000米ドルとしよう。4000米ドルのウエハーから2000個のチップが取れる。つまり、原価は1チップ当たり2米ドルとなる。歩留まりが90%なら、おおむね原価は1割高くなる。その上にテストコスト、パッケージコスト、設計コスト、販売コストなどが乗ってくる。それ故、64ビット4コア=5米ドルは驚異的な数字と言わねばならない。しかし、Allwinnerはこれほどの低価格でA64をリリースし、15米ドルという低価格なPINE64を実現できているのだ。

 図4は、A64プロセッサのチップ開封の様子である。ARMの最新の64ビットコアを4基搭載し、さらにはGPU、4Kビデオエンジン、MIPIやHDMIのインタフェースを備えた高度なSoCとなっている。中国のファウンドリーであるSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)の先端工場で、28nmプロセスを使って製造されている。


図4:A64の内部(クリックで拡大)出典:テカナリエレポート

 図5は、本家ラズパイ3とPINE64を比較したものである。ともに64ビットCPUコアを4基搭載するという点では同等の製品だ。しかしGPU性能は、PINE64に搭載されているARM「Mali-400」の方が、約4倍高いものになっている。


図5:ラズパイ3とPINE64の比較結果(クリックで拡大)出典:テカナリエレポート

 製造プロセスは、ラズパイ3に搭載されたBroadcomのプロセッサ「BCM2837」はTSMCの40nmプロセス、PINE64のA64はSMICの28nmプロセスだ。40nmよりも28nmの方がチップに供給する電圧が低いので、電力は20%ほど少ない。すなわち高性能で低消費電力のプロセッサは、ラズパイ3ではなく、PINE64に搭載されている方なのだ。しかも、製品自体の価格もPINE64がはるかに安い。

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