64ビット4コアCPUが5ドル、中国メーカーの価格破壊:製品分解で探るアジアの新トレンド(15)(3/3 ページ)
「PINE64」は、「ラズパイ3」同様、64ビットのシングルボード・コンピュータである。だが、価格はラズパイ3のおよそ半分。それにもかかわらず、搭載しているチップの性能は、ラズパイ3を上回るものもある。PINE64の分解から見えてきたのは、中国チップメーカーによるCPUの“価格破壊”であった。
さらに普及が見込まれる格安CPU
図6は、AllwinnerのA64を採用した商品の一例である。一方で、ラズパイ3のBCM2837は、専用チップとして使われていて、ラズパイ以外には使われていない。
先述した通り、チップ価格を下げるには、さまざまな市場に同じチップを大量に出荷し、「量産効果」を出すことが一番の近道である。その点、A64は多様な市場で採用されていて、ウエハーも大量に使うため、ウエハー価格も下げることができている可能性が高い。
A64を使う「azpen HYBRX A1160」はOSにRemixを用い、11.6型ディスプレイを備える136.88米ドルからの激安ノートPCだ。「PINEBOOK」はさらに安価なノートPCである。OSはAndroidやLinuxなどに対応し、価格は89米ドル。
この他にも、さまざまなタブレットやセットトップボックスにA64は採用されている。米国メーカーの製品もあるが、これらは実際には中国で開発され、製造されている物だ。A64はシングルボード・コンピュータのプロセッサとしてばかりでなく、“教科書的なASSP(Application Specific Standard Product)”として、Allwinnerのチップは広がっている。今回紹介したA64のGPU機能を強化した「Allwinner H5」も出回り始めていて、Allwinnerの格安プロセッサは、さらに普及する可能性が高いと思われる。
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