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パッケージング技術がワンチップ化の限界を突破福田昭のデバイス通信(102) TSMCが解説する最先端パッケージング技術(1)(1/2 ページ)

システムを複数のチップに分けてから高密度に集積化したパッケージは、SiP(System in Package)と呼ばれる。「ムーアの法則」を拡張するために、新しいSiP技術あるいはパッケージング技術が次々に登場している。今回から始まる新シリーズでは、こうした新しいパッケージング技術を紹介したい。

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「ムーアの法則」の限界と拡張

 2016年12月に開催された国際学会IEDMのショートコース講演(技術解説講演)から、「システム集積化に向けた最先端パッケージング技術(Advanced Packaging Technologies for System Integration)」と題する講演の概要をシリーズでご紹介する。講演者はシリコンファウンドリー最大手のTSMCでシニアディレクターを務めるDouglas Yu氏である。なお講演内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、Yu氏の講演内容を筆者が適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 それでは本論に入ろう。半導体産業の発展を40年以上にわたってけん引してきた基本原理は、「1枚のシリコンダイに集積するトランジスタ数を増やすこと」、すなわち、より大規模なシステムの「ワンチップ化」である。この基本原理は「ムーアの法則」によって定量化された。おおよそ2年間でワンチップのトランジスタ数が2倍に増加する、というのがその具体的な内容である。ワンチップ化によってシステムの製造コストは大幅に低下する。トランジスタ数を増やすことは、ワンチップ化できるシステムの範囲が広がることを意味する。

 「ムーアの法則」を維持することのメリットはほかにもあった。高速化である。トランジスタ数の増加と並行して、最大動作周波数が向上してきたのだ。しかし最大動作周波数の向上は、西暦2005年ころに止まってしまう。最大動作周波数の向上を止めたのは、消費電力の増大である。言い換えると、発熱量の増大が放熱技術の限界を超えたためだ。

 また経済的には、トランジスタの単価が下がらなくなってきた。従来はトランジスタ数の増大は、コストの低減を意味した。しかし2015年ころには、微細化に伴う製造コストの増大ペースがあまりにも大きくなった結果、トランジスタの単価が下げ止まり、逆に上昇する兆しを見せている。より多くのトランジスタをワンチップに詰め込むことの意義は、薄れてきた。


ムーアの法則とその課題。右下の大きなグラフは、トランジスタ数(シリコンチップ当たり)と動作周波数(最大クロック周波数)、消費電力の推移。左上の小さなグラフは、1ドル当たりで買えるトランジスタ数の推移(クリックで拡大) 出典:TSMC

 そこで「ムーアの法則」を拡張するため、システムを複数のチップに分割したままで高密度化する新しい世代のパッケージング技術が次々と登場している。本シリーズでは、新世代のパッケージング技術を概観する。

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