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見通し外の位置にいるドローンの制御が可能にテクノフロンティア2017(1/2 ページ)

情報通信研究機構(NICT)は「テクノフロンティア2017」で、障害物を迂回してドローンに電波を届けるマルチホップ無線通信システム「タフワイヤレス」と、ドローン間位置情報共有システム「ドローンマッパー」を発表した。前者は、発信地から見て見通し外の場所にいるドローンを制御するためのシステム。後者は、ドローン同士の衝突を防止するためのシステムだ。

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約60ミリ秒の遅延時間

 情報通信研究機構(NICT)は2017年4月19〜21日に幕張メッセで開催の「TECHNO-FRONTIER 2017(テクノフロンティア2017)」にて、制御局からの電波が直接届かない場所でのドローンの飛行を可能にするマルチホップ無線通信システム「タフワイヤレス」とともに、ドローン間位置情報共有システム「ドローンマッパー」を公開した。

 ドローンが見通し外の位置にいるとき、つまり制御局からの電波が障害物に遮られドローンに直接届かないとき、ドローンとの通信を維持するには障害物を迂回して電波を伝える必要がある――。これを実現するのがマルチホップ無線通信システムのタフワイヤレスだ。マルチホップ通信とは、発信者と受信者の間に第三者を挟んで通信すること。タフワイヤレスでは、ビルや山の向こう側へ飛んでいったドローンの制御を保つために、中継局を積んだ別のドローンやロボットを障害物の真上や脇に向かわせ、制御局からの電波を中継局経由でドローンに届ける。


制御局・中継局の配置とドローン飛行ルート(東北大学青葉山キャンパス) 提供:NICT

 ICTがタフワイヤレスを開発したのは、ドローンの産業用途での実用を見据えてのことだ。実際、遮蔽(しゃへい)物によって無線が切れることは、物流へのドローンの活用を妨げている。例えば、荷物を届けるために街中を低い高度で飛ぶと建物で電波が遮られる。高い山に囲まれた集落に荷物を届けるとき、通信を維持するのはもっと困難だ。そのため、現状では物流にドローンを利用する場合、プロポ(送信機)を持った人がドローンに付いていく必要がある。しかし、タフワイヤレスを活用すればその必要はなくなる。

 タフワイヤレスを根本で支えているのは、制御局とドローン間における電波送信の遅延時間の短さである。「Wi-Fiなど既存の通信手段の場合、遅延時間は数百ミリ秒もある。しかし、タフワイヤレスの遅延時間は約60ミリ秒と短い」(NICT)。この遅延時間の短さが、ダイレクトリンク(中継局なし)とマルチホップを瞬断なく切り替えることを可能にしている。既存の通信手段を使うと、切り替え時に通信が途切れてしまうそうだ。


制御局とドローン間の遅延時間 提供:NICT

 通常時通信モードの場合、タフワイヤレスは920MHz帯を利用する。1ホップ当たりの通信距離は1.3km程度。現時点では3ホップが上限なので、計3.9km程の通信が可能だ。ただし、NICTは「地上対地上よりも地上対上空の方が電波が遠くに飛ぶ。まだ実証実験を行っていないが、中継局をロボットにではなくドローンに積んだ場合、4km以上通信できる可能性がある」という。

 一方、タフワイヤレスは緊急手段として169MHz帯のバックアップ通信機能を備えている。どの中継局の電波も届かない範囲にドローンが飛び制御不能になる――という不測の事態に対応するためだ。169MHz帯は総務省が2016年にロボット用の無線帯域として割り当てた周波数帯域。3チャンネル程度しかないのが欠点だが、920MHz帯よりも遠くに電波を飛ばすことができる。その通信距離は10km以上だ。

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