見通し外の位置にいるドローンの制御が可能に:テクノフロンティア2017(2/2 ページ)
情報通信研究機構(NICT)は「テクノフロンティア2017」で、障害物を迂回してドローンに電波を届けるマルチホップ無線通信システム「タフワイヤレス」と、ドローン間位置情報共有システム「ドローンマッパー」を発表した。前者は、発信地から見て見通し外の場所にいるドローンを制御するためのシステム。後者は、ドローン同士の衝突を防止するためのシステムだ。
ドローン同士、有人ヘリとの衝突を防止
さらにNICTはタフワイヤレスを応用し、ドローン間位置情報共有システム「ドローンマッパー」を開発した。ドローンマッパーは、ドローン同士の衝突を避けるためのシステムだ。ドローン局というデバイスを積んだドローン同士が一定の通信圏内に入ったとき、互いの位置関係がタブレット端末上に表示される。ドローン同士の衝突の他、ドローンと有人ヘリの衝突を避けるのにも役立つ。
似たようなシステムは他の研究機関や企業も開発しているが、ドローンマッパーは2ホップ機能という独自の機能を備える。「建物に遮られ他人のドローンが自分の目から見えない時でも、自分のドローンを建物よりも高く飛ばして、そのドローンと他人のドローンを通信させれば、他人のドローンの位置を把握できる」(NICT)。他には、ドローン同士が半径100m以内に入ると警告する仕組みがある。将来的には音声警告機能も実装する予定だ。
現状では、ドローンマッパーを採用したドローンと、他の研究機関や企業が開発した別の方式を採用したドローンが、互いの位置を把握することはできない。NICTはそれについて、「実際にどうなるかは分からないが、異なった方式を採用したドローン同士でも共通の運行管理システムを通じて位置情報を共有できるようになる」という未来の青写真を描いている。
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