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外交する人工知能 〜 理想的な国境を、超空間の中に作るOver the AI ―― AIの向こう側に(10)(6/9 ページ)

今回取り上げる人工知能技術は、「サポートベクターマシン(SVM)」です。サポートベクターマシンがどんな技術なのかは、国境問題を使って考えると実に分かりやすくなります。そこで、「江端がお隣の半島に亡命した場合、“北”と“南”のどちらの国民になるのか」という想定の下、サポートベクターマシンを解説してみます。

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「エイヤ!」で国境を決めてしまう

 まずは、最も簡単な国境線問題を考えてみます。

 このケースでは、<北>に属したい人は北側にいて、<南>に属したい人は南側にいるので、直線で国境を作れそうですが、そのパターンは無数にあります。

 これを「エイヤ!」と決めてしまう方法が「マージン(余白)最大化」です。

 マージン最大化とは、<北>に属したい人(1人)と<南>の属したい人(1人)の中で、〉もっとも近くにいるペアを選んで、その距離が最も遠くなるような直線を国境とするものです。

 で、このペアのことを「サポートベクター」と呼びます。確かに、このペアは「国境を作る助け(サポート)をする2点からなる線(ベクトル)」の役割をしています。

 しかし、実際のサポートベクターの選出は、図で書くほど簡単ではありません。というのは、マージン(余白)というからには、そのマージンの間には、<北><南>の国民の誰もいないことが条件となるからです*)

*)このマージンは、朝鮮半島の軍事境界線の幅4kmの非武装中立地帯と良く似ています。

 実際、次のようなケースでは、マージンは言うまでもなく、直線の国境を引くことすらできません。

 この場合には、希望通りの国境は引けないので、一部の人たちには、移住を検討してもらうことが考えられますが、それではサポートベクターマシンは単なる直線2分割問題を問いているだけの話になってしまいます。

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