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自動車市場に本腰を入れる台湾PC市場での成功モデルを再現?(1/2 ページ)

台湾が、本格的に自動車市場に狙いを定めている。現時点では、自動車分野にキープレイヤーとなる台湾メーカーはないものの、PC事業やファウンドリー事業における成功事例を持つ台湾は、車載分野においても力をつけていく可能性がある。

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車載事業の強化に狙いを定めた台湾

 小さな島国である台湾は、国内に自動車メーカーを1社しか持っていないが、世界自動車業界における新たな拠点としての地位を獲得するという目標を実現することは可能なのだろうか。

 しかし、台湾は以前にも、よく似た野望を抱いていた時期がある。台湾が現在、工業分野における成功を収めることができたのは、PCとスマートフォン市場に根を下ろしたからである。小規模な国家である台湾が、自動車分野に重点を置く方向に転換していくための枠組みは、既に確立されているといえるのではないだろうか。

 それでも、台湾は現在、自動車市場において担っている役割が特にないということもあり、自動車業界のアナリストたちが、このような野望が夢物語であると判断しているのも無理はない。

 米国の市場調査会社であるThe Linley Groupでシニアアナリストを務めるMike Demler氏は、「正直なところ、自動車業界において、台湾の名が知られている分野を思い浮かべることができない」と率直に述べている。

 米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsでオートモーティブエレクトロニクスサービス担当ディレクターを務めるIan Riches氏も、Demler氏の見解に同意し、「台湾は、既存の自動車業界において、主要なプレイヤー企業であるとはとてもいえない。自動車分野で世界的な地位を確立している台湾の企業としては、数多くの車載用半導体メーカーをサポートする巨大ファウンドリーであるTSMCが挙げられるのではないか」と述べている。

 技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligenceの創業者であり、主席アナリストを務めるPhil Magney氏は、もう少し寛容な見方をしているようだ。同氏は、「台湾メーカーが、インフォテインメントや照明などのさまざまな分野向けに供給している電子部品を、いくつか挙げることができる。しかし、こうした台湾メーカーに、統合型の安全システムを構築したり、厳格な機能安全要件に準拠できるだけの経験が十分にあるとは思えない」と述べている。

楽観的な台湾、PC市場での成功が糧に

 確かに、台湾は自動車市場において、ごく初期の学習段階にあるといえる。それでも、台湾車聯網産業協会(TTIA:Taiwan Telematics Industry Association)の事務総長であるPaul Chou氏は、気を落としてはいないようだ。

 Chou氏は、台湾・台北で2017年4月19〜22日(現地時間)に開催された「TAIPEI AMPA(台北国際自動車部品及びアクセサリー見本市)」において、インタビューに応じ、「PCの誕生当時を振り返ってみると、PC業界も最初は断片化していて、極めて混乱した状態だった。そのような状況は、高性能な自動運転技術の実用化が始まっている現在の自動車業界と同じではないだろうか」と述べている。

 やがてPC市場では、MicrosoftがWindowsを、そしてIntelがx86プロセッサアーキテクチャをそれぞれ推進し始めたことにより、“Wintel”プラットフォームを中心としたPCを構築するための取り組みが進められるようになった。そこで台湾は、他のどの国よりも早く、PC市場向けの戦略を構築したという。

 Chou氏は、「台湾では、その後の5年間で、新興企業が次々と誕生した。その多くが、I/Oやマザーボード、マウス、キーボードなど、PC関連のあらゆる製品を開発して統合する企業だった」と説明する。

 「台湾は、PC業界向けに、堅固なODM(Original Design Manufacturing)事業基盤を作り出し、現在では世界全体のノートPCの生産量の90%を占めるまでになった。また、PC市場向けの高品質部品を供給する主要サプライヤーとしての地位も確保した。さらにスマートフォン市場でも、同様の展開を成し遂げている」(同氏)

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