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0.05mmの組み込みずれも許さない、カシオ新型モジュールへの挑戦G-SHOCKの新モデルに搭載(2/3 ページ)

カシオ計算機は、耐衝撃ウォッチ「G-SHOCK」の新モデル「GPW-2000」を発売する。標準電波とGPS電波に加え、スマートフォン経由で接続したタイムサーバからも最新の時刻を取得する仕組みを搭載した。その肝となる技術が、カシオがGPW-2000のために開発した新モジュール「Connected エンジン 3-way」だ。同モジュールの開発にまつわる話を聞くと、腕時計に対するカシオのこだわりが見えてくる。

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新モジュールの開発は、部品点数との戦い

 このように3つの方法で時刻を取得することを可能にしているのが、Connected エンジン 3-wayだ。遮光分散型ソーラーパネル、標準電波受信アンテナ、GPS受信システム、BLEアンテナ、小型モーター、耐磁板などで構成されるモジュールである。


カシオ 時計事業部 モジュール開発部 実装開発室の横尾一将氏

 時刻取得のための方法が1つ増えることは、同モジュールの設計面で大きな課題を生んだ。

 カシオ 時計事業部 モジュール開発部 実装開発室の横尾一将氏は、Connected エンジン 3-wayの開発において最も苦労したことの1つは、部品のレイアウトだと語る。「部品点数が、ほぼ2倍になった」(同氏)からだ。「標準電波のアンテナ、GPSのアンテナ、BLEのアンテナが互いのアンテナ性能に影響を及ぼすため、その影響を最小限に抑えるように配置する必要があった。加えて、モーターやLEDなど時計としての一般的な機能を実現するための部品も多数ある。これらを基板上でどう配線していくかということに、非常に気を配った。試作を何度も繰り返した」(横尾氏)

 結果的に、従来品では1枚だった基板が2枚になった。それぞれの基板の形を工夫し、GPSアンテナと二次電池を平面的に実装することで、モジュールの薄型化を図った。モジュール厚は従来比で10%薄型化している。


「Connected エンジン 3-wayの」の構成要素。左から遮光分散型ソーラーパネル、二次電池とGPSアンテナおよびBluetoothアンテナを搭載した基板、標準電波受信アンテナを搭載した基板、モーターを搭載した基板、耐磁板、日車(クリックで拡大)

 さらに、時計の針を動かすモーターの数が増えたことも、設計の難易度が上がる要因となった。前世代品では5個だったものが、6個となったのだ。しかも、針の位置はデザインが仕上がった時に既に決定しているので、モーターを配置できる場所が限定されてしまう。その上、日車の外側に位置しモードや経度を示すディスク針を高速に回転させるために、6個のモーターのうち2個はデュアルコイルモーターを使う必要があった。デュアルコイルモーターは、1個のモーターにつきコイルを2個使うので、部品点数がさらに増えることになる。

 横尾氏の言葉通り、Connected エンジン 3-wayの開発は、部品点数との戦いであった。

GPS受信システムを従来比4分の1に低消費電力化


カシオ 時計事業部 モジュール開発部 第一開発室の尾下祐樹氏

 GPS受信システムにも改良を加えた。最大の特長は、消費電力を従来の4分の1に抑えた点である。GPSシステムの開発を担当している時計事業部 モジュール開発部 第一開発室の尾下佑樹氏は、GPS受信ICはソニー製だが、「単にそのまま搭載するのではなく、より省電力化を図れるよう詳細な点で打ち合わせを重ねた」と話す。受信IC周りの設計を最適化したり、受信ICを駆動するファームウェアをカスタマイズしたりするなど、細かい改善を繰り返した。

 「こうした調整を重ねることで、低消費電力化を図った。GPSアンテナについても何度も試作を重ね、従来と同じ感度を維持しつつ、体積は従来比で20%低減している」(尾下氏)。これにより、既存品で使用しているコイン型リチウム二次電池(CLB2016/サイズ=直径20mm、高さ2.0mm)ではなく、小型二次電池(CTL1616/サイズ=直径16mm、高さ1.6mm)を使えるようになった。「CTL1616はCLB2016よりも低電圧で駆動できるので、ソーラーパネルで受光したわずかな光で充電できる。そのため、ソーラーパネルの上に配置する文字盤の透過率をあまり気にしなくてもよくなり、文字盤の色においてデザインの制約も少なくなった」(尾下氏)

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