目指すはロボット技術立国 ―― 移動体IoTと産業用ドローンへの取り組み:JASA発IoT通信(2)(4/4 ページ)
移動体のIoT(モノのインターネット)では無線通信を前提とするため、通信遮断対策や帯域確保などさまざまな課題が生じてきた。ここにエッジコンピューティングを導入し、組込みソフトと無線通信の協調による移動体IoTを実現させる。当初はコネクテッドカーからスタートした移動体IoTであるが、昨今は同様の技術がドローンに展開され始めた。ホビー用途のドローンでも、組込みソフトが機体の姿勢制御などを操る。産業利用のドローンには、さらなる安全性と信頼性が求められる。組込みソフトと無線通信の協調が果たす役割は大きい。
JASAによるドローン制御ソフトの推進活動
このような特徴を踏まえ、幾つもの団体が協調して取り組みを開始した。
組込みソフトに関しては、JASA(一般社団法人 組込みシステム技術協会)が牽引している。ドローンはセンサーとモーター・アクチュエーターの組合せである。JASAは、センサーとモーター・アクチュエーターを用いるためのフレームワークであるOpenELを開発し、オープンソースとして公開した。Open ELは、米国Object Management Group(OMG)にて国際標準化が進められている。
・参考URL:http://jasa.or.jp/openel/Main_Page/ja
このようなノウハウを最大限に生かすことで、ドローンのオープンソースソフトウェアについてもイニシアチブを発揮している。
JASA内にIoT技術高度化委員会(別名、移動体IoT技術研究委員会)を立ち上げ、意欲的に活動している。
MCPCによるドローン無線通信のガイドライン策定活動
無線通信ではドローンのみならず、広く移動体ロボット全般を視野に標準化を進める必要がある。
MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)では、Wi-FiやBluetoothなどの無線技術に関する国内での活動を取りまとめてきた。このようなノウハウを生かすことで、ドローン無線の標準化を見据えたガイドライン策定に取り組み始めている。
限られた帯域を有効利用するためにも、産業用ドローンのユースケースを見極める。設備点検と物の運送では、同じ空域を飛行する機体の数、飛行速度などが大きく異なる。よって、考慮すべきユースケースも複数考えなければならない。
MCPC内に、ワイヤレスシステム活用委員会(傘下にドローンワーキング部会)を立ち上げた。この活動には、前述のJASA IoT技術高度化委員会もメンバーとして加わっている。
関係団体との協調
SMA(一般社団法人 スキルマネージメント協会)
JASA IoT技術高度化委員会は、発足当初からSMAとの共同開催として実施してきた。SMAはETSS(組込みスキル標準)やMBD(モデルベース設計開発手法)などを推進していて、ドローンの制御ソフトにも同様の技術の適用を検討している。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)
IPAとJASAは、古くから組込みソフト産業を支えるべく協調してきた。今回のドローンにおいても、品質やセキュリティの側面でIPAの支援を受けている。
JUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)
ドローンの運行管理については、JUTMが推進している。特に、WG2(衝突回避・機体識別・通信WG)が組込みソフトと通信との接点になる。JASAおよびMCPCは、JUTMのWG2にメンバーとして加わっている。
最後に
ドローンへの取り組みは、単に無人航空機の利活用だけが目的ではない。ドローンと同じような課題を抱える自走式ローバー(四輪)や海洋ドローン、さらには有人のマイクロEV(電気自動車)などに転用可能な技術が多く含まれる。
この領域を立ち上げずして、ロボット産業の裾野拡大は望めないだろう。立ち上げた先にはぜひ、この国のロボット技術立国を成し遂げたい。
筆者をはじめとする仲間たちは、ドローンをテコに組込み産業とIoTの国際競争力を高めるべく活動している。そして、次代を担う若きエンジニアたちに夢を託す。
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EE Times Japanでは、組込みシステム技術協会(JASA)とスキルマネージメント協会(SMA)が推進する「IoT技術高度化委員会」とコラボレーションし、連載「JASA発IoT通信」をお届けしていく。連載第1回目は、同委員会で主査を務める竹田彰彦氏のインタビューを紹介する。